退職金では足りない…ローンが払えなくなった老親の異変
不動産を購入した時にしていた支払いの計算が狂った! という事態は、特に退職金をもらう時に起こるようです。長年勤めあげて、退職する際にもらえる退職金ですが、時代とともにその額も下がってきています。
退職金でローンの残りを完済して、年金で生活する、これが以前の日本のサラリーマンの老後の道筋でした。でも近年、退職金は思っていたように支給されなくなり、年金受給もどんどん先送りになっています。もともとの道筋が、今は崩れてしまったので「家はあるけど現金がない!」という方が増えてきました。
英雄さん(仮名・43歳)は、親の自宅でこの問題にぶち当たりました。どうも親のお金の使い方がおかしい……そう感じたのは、父親が70歳を過ぎた頃からでした。いつまで旅行に行けるか分からないと、1泊2日の温泉旅行に毎月のように行き出したのです。
「親父たちのお金だから何に使ってもいいけれど、お金大丈夫なの?」
英雄さんのお父さんは真面目に働いてきましたが、有名な大きな会社を勤めあげたわけではありません。退職金だって支給されたのかどうかも、怪しいものです。
毎月のように温泉旅行に出かける両親
昔から母親は事あるごとに「お金がない」と愚痴っていたくらいです。だから急に羽振りが良くなったような気がして、心配になったのです。
でも親子でお金の話は、なかなかしにくいもの。
「放っておいてくれ! お前には迷惑かけん」
そう怒鳴られてしまうと、もうそれ以上何も言えなくなってしまいました。本当におかしいと気が付いたのは、それから半年くらい経ったGWのことです。
毎年この頃にくる固定資産税の納付書に、母親は「何でもかんでも税金ばっかりで」そう必ずぼやいていました。ところがその年は、何も言わないのです。
「母さん、今年は固定資産税のこと、ようやく受け入れたんだ」
笑いながら言うと、母親は黙っています。
「あれっ、母さん、いつも固定資産税のことぼやいていたじゃない」
そこまで言っても、母親は下を向いたままです。
おかしい……。いつもお金がない、税金が高い、そう文句ばかり言っていた母親が、固定資産税のことを聞かれても黙っているだなんて、おかしすぎます。
「母さん、父さんと母さんのお金だから、僕は何も言わないよ。でもちょっとおかしいでしょう? 何がどうなっているの?」
困った顔をした母親が、絞り出すような声で言いました。
「家は売ったから。お父さんに言うなって言われていて……」