「政界と教団を結ぶキーマン」と名指しされた男性

信者への説明を終えて本部職員の男性が、その場を離れて、ホールの壁側にいた私の方にやってきた。「お疲れ様でした。みなさんかなり思うところがあるんですね」と労をねぎらうと、男性はにっこりと微笑んで言った。

「この1年半、みなさんは本当にいろいろな厳しい目にあってきましたからね。中には、本部の対応に不満がある人もいます。まあ、田中会長を前にしたら、みなさんさすがにあまり厳しいことを言わないでしょうが、私のような下っ端ならばみなさんも安心して“この野郎、もっとしっかりやれ”なんて感じで気軽に言えますでしょ?」

そんな茶目っ気たっぷりなこの男性の名は、鴨野守さん。教団関連の新聞社「世界日報」で記者や編集委員を長く務めた後、教団本部の広報局長を経て、現在はこの夏、富山県で一般社団法人「富山県平和大使協議会」の代表理事をしている人物だ。

そんな鴨野さん、実は教団を追及するジャーナリストや弁護士の間では、ちょっとした“有名人”である。富山県のマスコミなどからは「政界と教団を結ぶキーマン」と目されているのだ。富山のJNN系列のテレビ局「チューリップテレビ」の報道がわかりやすい。

「政界との接点になった人物が取材で判明しました。県平和大使協議会の事務局長、鴨野守氏。富山県出身、世界平和統一家庭連合の広報局長を務めた幹部の1人で知事選で新田知事の選挙応援を担った中心人物です」(チューリップテレビ 2022年8月8日)

選挙を愛する「富山政界のフィクサー」

ちなみに、チューリップテレビでは、この新田八朗・現知事が当選をした時、選挙事務所に鴨野さんがいて知事と喜び合っている映像を流すとともに、2021年4月の富山市長選、同年7月の高岡市長選でも選挙事務所に鴨野さんがいて勝利を喜んでいる姿を放映して、地方選挙を3連勝に導いた「富山政界に暗躍する旧統一教会フィクサー」だと言わんばかりに取り上げ放題だ。

富山県庁舎本館
富山県庁舎本館(写真=663highland/CC-BY-SA-3.0-migrated/Wikimedia Commons

「映像を何度も見返して私を見つけたのは素直にご苦労さまと言いたいですが、ここにもいる、あそこにもいるという感じで、この鴨野というのは裏で暗躍するとんでもない人間だという印象を視聴者に与えて、ちょっと悪意を感じるような編集ですよね」

そう自嘲気味に笑う鴨野さんを、私は個人的に「すごい人」だと思っている。もちろん、信仰については共感できないし、政治思想や主義主張も異なる部分は多い。ただ、「選挙」というものを心から愛して、そして純粋に楽しんでいるところが、素直に尊敬できるのだ。

そう聞くと、「それは選挙が好きなのではなく、教団の政界工作のために必要だとマインドコントロールされているだけだろ」と冷めた見方をする読者もいるかもしれない。