からあげ店は「美味しいお店を作りやすい」
帝国データバンクが「2023年に入ってからあげ店の倒産が急増している」と発表しました。今年に入ってからのからあげ店の倒産件数は22件です。過去5年間の平均は年4件以下の倒産数でしたから、確かに急増と言っていい数字です。
私は経済の未来予測を専門にしています。からあげ店ブームが起きていた1年半前に「からあげ店は厳しい未来を迎える」という予測記事を発表していましたが、予測通り的中した形です。
帝国データバンクの記事では、倒産増加の背景にはからあげ店が急増したこと、原料費の高騰、そして節約志向で持ち帰りからあげのコスパが低下している点などが指摘されています。
それに加えてからあげ店には致命的なビジネスモデル上の欠陥があるというのが、私が1年半前のからあげブームの際に指摘したことです。それが「美味しいお店を作りやすい」という欠陥です。
直感で考えると「美味しいお店を作りやすい」なら自分もからあげ店の経営に乗り出してもいいと思いますよね。少ない投資で始められて、作ったからあげは自分で食べても美味しい。だったら売れるだろうと思うわけです。
どの店も美味しいからチキンレースになる
ところが経済学はそうは動かない。誰もがからあげ店を始めてしまったら世の中にからあげ店があふれてしまいます。しかもどの店も美味しいので、経営が苦しくなってきても商品に自信がある分だけ頑張ろうとする。誰もなかなか手を引かないチキンレースが始まるのです。
ちなみに私はこの先のからあげ業界の未来を考えると、もう一段階の進化が起きてふたたび業界が発展するという予測をしています。その話は後段でお話しするとして、まずは近年のからあげブームについて振り返ることから始めてみたいと思います。
ここ十数年来のからあげ文化の定着はまずもってコンビニの貢献が大きいと思います。セブン‐イレブンの店頭で買えるからあげ棒やファミリーマートで売っているファミチキ、ローソンのからあげクンなどスナック感覚でからあげを食べるシーンが増えました。そのからあげ文化を前提に、近年起きたからあげ店の急増のメカニズムを説明するとこのような流れになります。
まずコロナ禍で大手飲食店の業態転換が起きます。もう記憶としてはコロナも過去の話になりますが、国や県が外食の自粛を打ち出し営業時間も短縮される中で、大手飲食店は生き残りをかけてデリバリー需要に力を入れることになります。この時期に、ワタミがテリー伊藤氏とコラボした「から揚げの天才」やモンテローザの「からあげの鉄人」、ガストの「から好し」など大手がつぎつぎと既存店をからあげ業態へ転換して店舗数を増やしています。