大学教授の多くは書籍を執筆しているが、どれだけ儲かるのだろうか。関西の私立大学で大学教授を務める多井学さんは「売れる本をたくさん書いている人は儲かっているかもしれないが、“売れない教授”は本を書くほどお金がなくなってしまう」という――。(第1回)
※本稿は、多井学『大学教授こそこそ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。
本を出せば儲かるわけではない
明治大の齋藤孝教授のように、毎月本を出版して、印税やテレビ出演だけで、おそらく本務校の収入の何倍も稼いでいるであろう先生もいる。そういう人ばかり目につくから「大学教授は本を出して儲かる」と思っている人がいるかもしれない。そんなことはないのだ。
私レベルの「売れない教授」だと、本は書けば書くほどビンボーになる。どういうことか説明しよう。私はこれまでに10冊の本(単著)を出版している。このうち、4冊は完全な学術書で、著者印税は一銭も出ない。印税がないだけなら、まだいい。この4冊のうち3冊は「自腹」、あるいは勤務校からの「出版助成金か個人研究費」というかたちで、数十万、時に100万円以上のお金を出版社に供与して、ようやく出版してもらっている。
最初の単著本は、出版目的が明確だった。10年以上の研究成果を学術書としてまとめて「博士号」を取得するつもりだったからだ。国際的にみると、「博士号」を持っているか否かで大きな差が出て、ないと恥ずかしくなりつつあった20世紀末のことだ。歴史学などの文系では、通常論文よりも単著本の出版が研究業績として高く評価される。
英語の本ならなお良い。面識のあった出版社に話を持っていき、150万円の身銭を切った。北米の某国の外交事例を国際関係理論を用いて分析した780ページの単著として刊行され、この本により「博士号」を取得することができた。2冊目は海外への在外研究後、その成果を本にまとめた。