日本の不動産市場から引き上げる動きも

2022年頃から、欧州でも不動産大手企業の経営不安が表面化した。ドイツのアドラー、スウェーデンのサムハスビッグナスボラゲティ・ノルデン(SBB)、オーストリアのシグナ・ホールディングスなどはその代表例といえるだろう。いずれも世界の大手資産運用会社などから資金調達し、積極的に不動産の開発や取得を進めた。11月下旬、シグナは資金調達に行き詰まり経営破綻した。

中国や欧米ほどではないが、わが国の不動産市場にも変調の兆しが出ている。不動産業界の専門家によると、今年夏ごろから一部の海外投資ファンドは保有するオフィスビスなどの売却を模索し始めた。

そうした動きは秋口あたりから本格化し、2023年の海外投資家による国内不動産取引額は減少する公算が大きい。海外投資家は、日本の商業用不動産投資で手に入れた利得を確定し、欧米のオフィスビルなどへの投資で発生した損失を埋め合わせようとしているようだ。

東京都心5区の平均賃料も下がり続けている

中国不動産企業の破綻増加には、2020年8月に政府が実施した“3つのレッドライン”とよばれる不動産融資規制が、決定的影響を与えた。先端分野での米中対立の先鋭化、台湾問題の緊迫化などに対応するため、中国から自国、インドやASEAN地域の新興国に事業拠点を移す企業が増えたことも一因だ。

中国、欧米などに共通の要因として、テレワークの増加は大きい。2020年の年初以降、世界全体で新型コロナウイルスの感染は急拡大した。感染再拡大も長引いた。感染抑制のために、世界的に在宅勤務やテレワークは増えた。多くの人が、オフィスに行かなくても仕事をこなせることに気づいた。通勤から解放され、自己研鑽などに励むこともできる。仕事はオフィスでするのが当たり前という常識は崩れた。

その結果、世界的にオフィスの空室率は上昇した。供給が過剰になり、賃料は下落した。2023年10月まで39カ月連続で、東京都心の千代田、中央、港、新宿、渋谷区の平均賃料は下落した。オフィスの所有者は、当初想定したキャッシュフローを手に入れづらくなった。価格が高値水準にあるうちに売却しようとする投資ファンドなどは増え、市況は調整し始めた。