地元産で揃えて、大手の商品はいっさい置かない
扱っているのは農作物だけではない。
鮮魚売り場には「漁師さんから直送! 魚の産直」の文字。冷蔵ショーケースには地元の漁港を中心に水揚げされた魚が所狭しと並ぶ。鰹、はまち、あじなど一匹まるごと販売する魚は手数料を払うと、注文どおりさばいてくれる。
さすがに精肉売り場は、鹿児島県産の豚肉など、他県のものも目立つが、米国やオーストラリアなど海外の牛肉などは置いていない。
加工食品はもっと“異様”だ。
なにしろ一般のスーパーに並んでいる大手食品メーカーの商品がほとんどないのだ。しょうゆや酢のような調味料も地元産のものばかり。キッコーマンやミツカンなど、全国に名の知られた大手の商品はいっさい並んでいない。
とはいえ、品揃えが薄いわけではない。しょうゆであれば、うすくちしょうゆ、刺身しょうゆなど、食卓に必要な種類はきちんと地元産で揃えてあり、来店客のニーズに応えている。
「小遣い稼ぎ」止まりだった既存直売所とどこが違うか
「なんだ、規模が大きな直売所じゃないか」
読者の中にはそう思われた方がいるかもしれない。
たしかに生産者が作った野菜や果物などを中間流通を通さずに並べる直売所や、地元産の一次産品を取り扱う道の駅などは、いまや日本中のあちこちに見られるようになった。休みの日には、行楽がてら美味しいものを目当てに足を運ぶ人も多いだろう。
だが、「よってって」にはこうした店舗とは決定的な違いがある。
従来の直売所や道の駅で扱う野菜や果物などは、地元の1店か、多くても近隣の2~3店でしか売ることができなかった。なぜなら、中間流通が担っているような物流機能を持っていないからだ。だから農家が頑張って直売所で売ったところで、店舗数が限られ、せいぜい「小遣い稼ぎ」程度に終わってしまった。
鮮度の良さ、品質の高さや、生産者の顔が見える――など、直売所で買うメリットは広く認知されるようになったが、生産者の立場からすると販売を大きく広げることができないのがこれまでの難点だった。
そもそも、そうした配送機能を持つ中間流通を「中抜き」するのが直売所の仕組みである以上、販売網を広げるのが難しいのが宿命である。
それに対して、「よってって」は一人の生産者がつくった作物や商品を広域に販売できるのだ。和歌山を中心に奈良、大阪まで30店舗があるが、農家がある店舗に持っていくと、それを別の店舗に配送できるシステムが構築されているのである。
つまり、農家は生産量さえ確保できれば、「よってって」の店舗ネットワークの広がりに合わせて販売数量を増やすことができるのだ。
このように、直売所の限界を打破し、農家が中間流通を通さずとも自分が生産した作物を広域で販売できるようにしたのが、「産直市場よってって」。そのシステムこそが「野田モデル」なのである。