旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性加害問題で被害を訴えていた元ジャニーズJr.の40代男性が山中で死亡しているのが見つかったと報じられました。遺書らしきメモがあり警察は自殺とみているようです。
男性にはSNSで多数の誹謗中傷が投稿されていたといいます。同じくジャニー氏による被害を訴えている人々がネットニュースのコメント欄やSNSで「被害証言はうそ」「売名行為だ」などと誹謗中傷されたとして警察に被害届や告訴状を出したことも報じられています。
亡くなった方、被害を受けた方とご家族に心からお悔やみ、お見舞いを申し上げます。性加害を受けたことがどれほど心に傷を残し、他人になかなか被害を伝えられないものか、私自身の体験を通して訴えたいと思います。
性犯罪見直しを巡り弁護士と議論
私は5年前までNHKの記者として大阪で裁判や検察の取材を担当していました。そこで森友事件を取材し、後にNHKを辞めることになるのですが、ここで記すのは森友事件が発覚する少し前のことです。ある弁護士が裁判所内の大阪司法記者クラブで会見を行いました。
内容はこの弁護士が関わっているえん罪事件に関するものでした。私は東住吉えん罪事件の青木惠子さんのことに強い問題意識を持って取材していたため、この件も興味深く話を聞き、会見後も個別にこの弁護士と話をしました。
そのうちこの弁護士が国の法制審議会で刑法改正について議論する部会の委員を務めていることがわかりました。刑法改正の焦点の一つは性犯罪に関する規定の見直しで、マスコミはしばしば「厳罰化」と表現していました。これに私は違和感がありました。
「厳罰化と言いますけど、そこが最大の焦点ではないですよね。私は性犯罪の概念を見直すことが最大の焦点だと思います」
「そうですね。私も単なる厳罰化にはむしろ反対なんです」
弁護士がそう答えたのをきっかけに性犯罪の見直しについて話題が盛り上がりました。それまで強姦罪は「男性が女性に性交を強要すること」と定義されていました。同じように被害者を深く傷つける性行為の強要でも、性交の定義に当てはまらなければ強姦罪とされず強制わいせつ罪で裁かれていました。
ところが強制わいせつは強姦に比べ法定刑が軽く、捜査で被告を起訴する検事たちから「こんなひどい行為でも強姦より罪が軽くなる」という憤りの声を聞いていました。