少数店舗で大手と渡り合うドムドム
規模的にベッカーズに近いハンバーガーチェーンにドムドムハンバーガーがある。店舗数は経営母体の経営不振や営業譲渡によってグッと減り、現在全国に27店舗である。北は岩手県、南は福岡県と広く点在しているが、店舗数が多くないためかローカルチェーン的な受け止め方をしている消費者も多い。
日本初のハンバーガーチェーン店であり、2018年に新橋の居酒屋の元おかみさんである藤崎忍氏が社長に就任し、花やしき内に新店舗をオープンしたり、ハサミや足をそのまま残したカニのフライがバンズに挟まっている「丸ごと‼カニバーガー」でSNSで注目を浴びたりと、何かと話題に事欠かず堅調に営業している様子である。
少数店舗で大手ハンバーガーチェーンと渡り合っていくためのビジネスモデル、その正解の1つの形を、少なくとも今のところドムドムハンバーガーは示しているように思われる。ドムドムハンバーガーは動きが何かと派手であり、その面白さが認知とブランド力につながっている向きがある。そしてその面白さはスケールメリットに依存しない。
超正統派が生き残ることが難しい時代
ベッカーズがブランドクローズに至った理由を、まさか「ドムドムのように動けていれば」などと乱暴な“たられば”で説明するつもりは毛頭ない。経営母体の状況や、ブランド力以外の営業努力等々、本当に種々の要因が重なっての結果であって、ベッカーズはベッカーズの、ドムドムはドムドムの強みや課題がそれぞれあった。
ただ、今この時代に限っていえば、ベッカーズのような「高品質でお手頃な値段の王道ハンバーガー」という超正統派の、少数店舗ハンバーガーチェーンは生き残るのが難しいのかもしれない。
正統派の高クオリティを目指して、それを達成しても経営が上向かないケースがあるのはなんともやるせないが、それも現実であろうか。今回、ベッカーズのブランドクローズを嘆く声が多くあがっているのも、ベッカーズが高クオリティを見事達成していたからであろう。
そしてブランドだなんだと書いたが、寡黙で王道な正統派ブランドをこそ愛する人もたくさんいるので、ベッカーズは意義ある営業をしてくれたことだけはたしかである。