今回の改定では楽天モバイルに加入した人のポイント倍率を従来の3倍から4倍に引き上げた。スマホでダウンロードしたゲームや有料アプリの支払いを楽天モバイルの課金システムで行う楽天モバイルキャリア決済の利用者もポイント倍率が0.5倍から2倍になった。
要するに「ポイントをたくさんあげるから楽天モバイルを使ってね」というわけだ。しかしネットメディアや新聞、雑誌の報道でご存じのように、今、楽天の財政は火の車である。9日に発表した第3四半期(23年7~9月)の連結最終損益は685億円の赤字。携帯電話に参入して以来、設備投資がかさみ、四半期ベースでは12期連続の最終赤字になっている。
事情が許すなら楽天もモバイルユーザーのポイントアップだけで済ませたいところだろうが、台所が苦しいのでそうもいかない。そこでモバイル以外の様々なサービスの倍率をちょこちょこ下げて帳尻を合わせた。それが今回の「改悪」の正体だ。
プレミアムカードの利用者には不評だが…
一番、割りを食うのが楽天プレミアムカードの利用者だ。年会費無料の楽天カードと違って年1万1000円の会費を取る楽天プレミアムカードには4倍のポイントがついていた。カード決済で年間55万円以上使えば元が取れ、国際線のVIPラウンジが無料で使える「プライオリティパス」がついていたので、海外出張や海外旅行が多い利用者に人気だった。
それが今回の改定でポイントが2倍(元を取るのに110万円の買い物が必要)に減り、プライオリティパスの利用も「年間5回まで」の制限がついた。
海外出張が多い筆者の知人も「改悪」を知り、「だったら有料のカードは別の会社にしようかな」と悩んでいた。楽天側は「楽天経済圏のサービスをフルフルで使った場合の最大倍率は15.5倍から16.5倍に増えるので改悪ではない」と説明しているが、そんな人は滅多にいないだろう。
それにしてもなぜ、SPUの改定がこれほど大騒ぎになるのか。俯瞰で考えれば、それは楽天市場や楽天カードが我々の生活に不可欠なものになっており、楽天ポイントが楽天経済圏(楽天市場、楽天トラベルなどのネットサービス、楽天カード、楽天証券などのフィンテック・サービス、楽天モバイルなどの通信サービスなど、楽天グループが提供している各種サービスの総称)の中で事実上「通貨」として機能しているからだ。
楽天が日本にあってよかった
楽天市場の立ち上げから四半世紀余り。楽天が築いてきた経済圏は巨大だ。楽天市場の国内流通総額はコロナ後も順調に伸びており、今期は6兆円を突破する勢いだ。2022年の全国の百貨店の売上高の合計が5兆1400億円だから、楽天市場単独でこれを上回ることになる。