これが先ほどの報酬の二重取り以外には思い付かないですよね。国会議員の公設秘書と地方議員はどちらも相互チェックの関係性にはありませんし、その一体性から金銭的癒着が発生するわけでもありません。
あえて言うなら「職務専念義務」を果たせない、という声があります。どの職業にもしっかりと職務に従事する義務があります。しかし今の時代、本業に支障が出ない範囲での副業は認めていこうという流れになっています。
「報酬の二重取り」と「兼職の可否」は別問題
この視点で国会議員の地元公設秘書の仕事と、地元地方議員の仕事を分析して見ると、かなりの部分で重なっており、兼職しても両方の職務に支障がないことがわかります。地元公設秘書も地元市議もどちらもメインの仕事は「地元の声を政治に届ける」こと。地元有権者の葬儀に出席したり、祭りや自治体イベントに顔を出したり。有権者とコミュニケーションを図り、地域の課題や声を吸い上げて政治に届けることが両者の主な仕事です。そうなると「兼職」にはデメリットどころかメリットのほうが多いことがわかります。地方の政治と国の政治をつなぎ、有権者の声を両方に届けることができる。加えて、両方の仕事を兼職させながら、報酬を一人分とすれば、税金の節約にもなります。
実際のところ、国会議員と地方議員の関係性は必ずしも良好とはいえません。だからこそ両者の立場を知る兼職者が、地方と国政を結び付けるのであれば、僕はメリットのほうが大きいと思っています。
そもそも僕は維新の代表を務めていた時代、「地方の首長と参議院議員を兼職させるべし」と主張していました。日本の国会は建前では二院制ですが、現実には参議院は衆議院のカーボンコピーと呼ばれ両者の差がわかりません。そうであれば首長が参議院議員を兼務することで、地方政治の声を国政に直接届けたほうがいいのではないか。
実際、ドイツ連邦参議院議員は各州の首相(首長)などが務めています。フランスでも地方首長と国会議員兼職は可能です。かつてジャック・シラクさんも、首相時代にパリ市長を兼務していました。こうして考察していくと、地方議員と国会議員公設秘書の「兼職」を禁止する根拠は、報酬の二重取り以外にはほぼないのです。むしろ兼職のほうにメリットがあります。
これから日本は本格的な少子高齢化社会を迎えます。「1人が2役・3役」を兼ねる兼職・副業の時代を推進すべき立場の政治家たちが、世間から批判を浴びたことで、自らの足元の兼職をバッサリ切り落としてしまうような今回の判断は、僕はどうかと思いますね。
繰り返しますが「報酬の二重取り」は論外です。しかし、それと「兼職の可否」は別問題。二重取りがダメならそこだけを禁ずればいい。問題が生じたら原因・理由を追究し、それに合わせた対策を講じる。これがリーダーに求められる問題解決の思考です。