国として負けても、個々では勝てる

――若い世代がベンチャーに目を向けるためには何が必要だと思いますか。

大学の教員がどんどん起業することが定着してほしいと思います。東大で起業が増えているのはそういうことです。先輩があんな感じで起業したんなら、自分もやらなきゃと思いますよね。

大学での研究だけでなく別の世界を知ることも大事です。百聞は一見に如かずと言いますが、大学の中でビジネスをしなきゃと思っているだけでなく、少しでも外を見て帰ってくると全然違います。ほんのわずかでもいいので、起業を頭に入れておいてほしいです。

磨けばダイヤになるような原石がそこに転がっていても、起業をまったく意識していない人は、石としか思わない。でも、少しでも意識していると「これ、もしかしたら」と思うかもしれません。その差はすごく大きい。

僕も、子宮内の細菌に関する一本の論文をきっかけにこの会社を作ったんです。起業という意識がゼロだったら、「おもしろい論文だな」で終わったはずです。でも、もしかしてこれビジネスのネタになりそうだなって思えたから今があるんです。

――米IT大手のグーグル、アップルなどが健康、医療などライフサイエンス関連分野へ進出しています。日本はもう勝ち目がないのでは。

確かに社会としては負けています。でも個々で勝てる場合もあるんじゃないかと思います。僕たちもこの子宮内フローラという小さいところである程度勝っているわけですから。

理学博士でゲノムベンチャー「バリノス(Varinos)」CEOの桜庭喜行さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
(聞き手・構成=ジャーナリスト・知野恵子)
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