リニア工事をめぐる大井川のヤマトイワナ

リニア工事による自然環境への影響を議論する静岡県生物多様性専門部会(部会長:板井隆彦・静岡淡水魚研究会会長)は2019年1月の第1回会議から、沢枯れ、地下水位の部分的低下、水質の悪化などを想定して、川魚のヤマトイワナ(サケ目サケ科イワナ属)保全を最大のテーマに議論してきた。

ヤマトイワナは全長30センチ前後の日本固有種。全国に生息するが、大井川水系では近年生息数が激減し、県レッドデータブックには絶滅危惧種の中でも最も高いランク(絶滅危惧1A類)に指定されている。

リニア工事区域ではほぼ絶滅したヤマトイワナ
写真提供=静岡市
リニア工事区域では着工前からほぼ生息していないヤマトイワナ

ヤマトイワナが生息しなくなったのは、自然環境の変化だけでなく、ほとんどは人為的な理由が大きい。そしてその人為的な理由を作ってきたのは主に静岡県である。

JR東海は、静岡工区のリニアトンネル計画路線に沿って、工事の影響を及ぼすとされる16地点で魚類調査を行ったが、ヤマトイワナは一匹も発見されなかった。つまり、ヤマトイワナはすでに工事区間内には生息していない。

にもかかわらず、県専門部会では「リニア工事の影響からヤマトイワナを守れ」とJR東海に求めている。すでに生息していない川魚の保全対応を考えろというのはあまりにも無理な要求だ。

工事区間とヤマトイワナの生息域は違っており、これでは建設的な議論につながるはずもなかった。

保護するどころか「食べろ」と推奨する静岡県

事業者のJR東海にヤマトイワナの保全を求める県自然保護課だが、どの流域にヤマトイワナが生息しているのかろくに調査もせず、全く把握してこなかった。ヤマトイワナは県の絶滅危惧種だが、法律、条例で保護保全する対象ではないからだ。

それどころか県水産課では、ヤマトイワナを漁業対象種として、渓流釣り人や地域の人たちなどで捕って食べることを勧めてきた。

そんな現状を無視した上で、県専門部会委員はJR東海に言い掛かりをつけ、空理空論をもてあそぶ会議を続けているのである。