スケジュールに先に“カギ”をかける

<strong>JTB 田川博己社長</strong>●1948年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。JTBインターナショナル副社長、JTB取締役営業企画部長、専務などを経て2008年6月から現職。「アイデア伝達のメモにはキーワードと一緒に渡す相手の名前も書いておく」
JTB 田川博己社長●1948年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。JTBインターナショナル副社長、JTB取締役営業企画部長、専務などを経て2008年6月から現職。「アイデア伝達のメモにはキーワードと一緒に渡す相手の名前も書いておく」

時間管理のためのツールとして手帳を本格的に使い始めたのは支店長時代です。40~50人の組織を預かる支店長になると、会議などで時間を取られて自分が自由にできる時間がだんだん少なくなってきます。自分の時間を獲得するために時間管理をして、「この時間はこれをやる」と決めておかないと、スケジュールがどんどん埋まってしまうのです。取締役となり、より大きな組織を預かるようになった2000年からは時間管理がますます重要になってきました。

社長という最終決裁をする立場になってみれば意外にスケジュール管理はしやすいのですが、専務や常務は上からも下からも言われる立場ですから何かと時間を取られます。重要なことを決断しなければならないし、決めて社長に進言しなければならない。考えるための時間をつくらないと、目の前の仕事に追われて判断を誤るのではないかという気がしていましたし、実際に取締役、常務、専務という立場を経験してそれを痛感しました。

考える時間をつくるためにいつもやっているのは、先に自分でスケジュールに“カギ”をかけてしまうことです。

役員になってからは秘書がスケジュールを管理してくれていますが、私は秘書から渡された日程表を自分の手帳に書き写します。書き写さないとなかなか予定が頭に入ってこないからです。基本的にはこうして手帳を埋めてゆくのですが、集中して考える時間を確保したいときには、スケジュールをブロックする旨をあらかじめ秘書に伝えておきます。たとえば講演の1週間前は必ず準備時間を2時間ほど取って、そこにほかの予定は絶対に入れないようにします。

スケジュールを管理して生み出した時間は、目先の仕事ではなく未来への投資の時間にあてます。たとえば用件の合間にタウンウオッチングをしたり、出張先では余裕をもってスケジュールを組み地元の商店街を見て歩いたりすることで、生の情報に触れることができます。これがもとになって新たな企画のアイデアが生まれたこともありました。

旅程を管理するという職業柄、スケジュールを調整してオンオフのモードを切り替えるのは昔から得意でした。いまは月に3、4日程度しか完全に休める日はありませんが、それでも旅行に出かけたりしてしっかり休暇を取ります。平日には若手社員と飲みにいったり、異業種交流会に参加する時間などもカギをかけて確保しています。

休日に妻とデパートに行くときも、消費者の動きの宝庫だと、つい興味深く来店客を眺めてしまいます。先日もあるデパートの食品売り場を歩いていたとき、通路の幅がゆったりしていてベビーカーで子供連れの方が心地よく買い物をしていることに気づきました。翻って、JTBの店舗はどうか。ファミリー向けのツアーを企画しているのに、ベビーカーの動線が確保されているかどうかと気になって、すぐに店舗に確認を取りました。

(小川 剛=構成 坂本政十賜=撮影)