課金制度の変更
楽天については、2000年頃に成長が鈍化したのではないかと指摘されるようになっている。株式公開後ということになるが、競合も増え早晩壁にぶつかるという指摘もあった。ただ、『小売業の革新』(石井淳蔵・向山雅夫編、中央経済社、2009)をみると利用者は増えていることがわかるし、先に見たように売上高も順調に増えている。見方によるのだろうが、退出店舗数が増えはじめ、出店数にブレーキがかかり始めている点が問題材料だと考えられていた。こうした問題の打開策としては、「直営」「従量制料金の導入」「広告の獲得」の導入が外部から指摘されるとともに、実際に楽天の中でも考えられてきたようである。
まず、直営については、2000年頃から書店、旅行、さらには証券とサービスが拡充されていく。特に書店については出店者との競合関係も生まれたが、最終的には楽天ブックスとして直営の仕組みが整えられた。また直営に限らず、こうしたサービス拡大に際しては当初よりM&Aが活発に行われていた。
サービスの拡大とともに最も大きな転換点となったのは、2002年に従量制料金を導入し、実質的な値上げに踏み切ったということである。当初、月5万円で100品目までが出店できるという定額制が敷かれていたのだが、これに加えて、売上金額に応じて数%の手数料をとるというやりかたに切り替えた。この判断は、当然それまでの店舗からは大きな反発があったが、一方で、この決定がその後の楽天の成長を左右することになった。
料金体系の変更は、ビジネス立ち上げ当初より検討されてきたことだったという。予想よりも早い段階で意思決定が必要になったものの、どこかで従量制に切り替えない限り、楽天という場所の運営がやがて危うくなると考えられていたのだった。店舗の売上が増えれば増えるほど、楽天のサーバーを中心とした負担も増すからである。
新聞記事を見ると、結果的には、予想したよりも退店はすくなく、導入後2ヶ月で152店舗と全体の3%弱であったという。背景には、既に楽天が大きな集客力を持つようになっていたことが指摘できる。また、店舗との関係も決して悪くはなかったのだろう。ちなみに、価格と提供サービスの関係については、1999年ごろには実質的な値下げがすすめられてきた。1999年には、基本料金の月額5万円で100商品の掲載が可能だったのだが、これを同じ額で500商品までの掲載を可能にしたのだった。2000年には1000商品にまで拡大されている。逆に、従量制については、2000年に開設された携帯電話向けの電子モールでは売上の3?5%の従量課金がなされており、徐々に足場を固めてきたことがわかる。
従量制を導入することで、おそらく楽天の収益性は改善することになった。これ以降の記事は、楽天に対して楽観的なものが多くなるようにみえる。また、アクセスの数が増えれば、当然広告収入の期待も大きくなる。既に2000年頃には、出店料収入を除く広告収入等が全体の32-33%になってきたとされ、その後も増えるであろうことが予想されている。