「おだちん」を与えると、家の中での仕事を報酬目的でやるようになってしまいます。シュンイチのケースのように、「おだちんがほしいから、手伝いをさせてほしいと頼む」という本末転倒の結果を生むこともあるでしょう。

成長するにつれて、家庭の構成員の1人として家の中で役割を持つことは子どもであっても当然のことです。お使いも、洗濯も、掃除も、子どもに任せるときには「お手伝い」としてではなく、家の「役割分担」として任せるように心がけてください。

窓を掃除する二人の小さな女の子
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たとえば、「晩ごはんはグラタンを作りたいと思ってたんだけど、牛乳がないんだよね。明日にしてもいいんだけど、あなたがもし今晩グラタンを食べたいなら、牛乳買ってきてくれない?」などと、子どもの意思で、その「仕事」をやるかどうかについて選ばせることが大切です。

親に認められた子供はすくすく育つ

子どもが牛乳を買ってきてくれたら、「ありがとう! これで今夜はグラタンにできるね」と感謝の気持ちを伝えましょう。親が子どもを認めることによって、子どもは家庭の中での役割を自覚し、「自分はこの家になくてはならない存在」だと自己肯定感を高めます。

お使いを頼んだときは、レシートとお釣りは必ず持ち帰らせます。シュンイチの母親のように、1000円札を渡してお釣りを返させずにいると、いつまでたっても経済観念が育ちません。基本的には、「おだちん」は安易に与えるべきものではありません。

私たちのところに来た親御さんで、風呂掃除をする度にわが子に「おだちん」を与えていたら、シャワーでササッと流すだけで「100円ちょうだい!」と要求されるようになったという方もいました。

風呂掃除も、みんなが気持ちよくお風呂に入るための「役割分担」です。お金を渡すのではなく、「ありがとう。きれいなお風呂に入れてうれしい」と感謝の気持ちを伝えるだけにしましょう。

お小遣いは「学年×100円+α」が基本

子どもが、経済観念をどこよりも早く学ぶ場所が家庭です。「ペアレンティング・トレーニング」では、子どもの脳育てには、子どもが社会に出るための経済教育として、各家庭での「お小遣い制」が必須であると考えます。

家庭の経済状況などによって額は異なるでしょうが、小学生なら「学年×100円+300円(家庭の経済状況で変えてかまいません)」が基本的な考え方です。「ノートや鉛筆など勉強に必要な文房具はお小遣いで買うものには含まれない」など、どこからどこまでがお小遣いで買う物なのかを親子で話し合い、ルールを決めましょう。