ユニクロをはじめとするファストファッションブランドでは、一流デザイナーとのコラボ商品も手ごろな価格で買える。なぜそんなことが可能なのか。ライターの南充浩さんは「一流デザイナーたちは、顧客が限定的な高級ブランドだけでなく、大衆層にも認知を広げたい。このため高級ブランドの『入門編』としての役割がある」という――。
ニューヨーク市のユニクロストア
写真=iStock.com/carterdayne
※写真はイメージです

一流ブランドのデザイナーがユニクロとコラボ

英国生まれのデザイナー、クレア・ワイト・ケラー氏とユニクロがコラボしたレディースライン「UNIQLO:C(ユニクロ:シー)」が9月に発売となりました。クレア氏はこれまで「プリングルオブスコットランド」「クロエ」「ジバンシィ」など有名ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務めており、まさに世界的著名デザイナーの一人といえます。一般のマス層にはあまりなじみが無い名前だったと思いますが、今回のコラボで日本にもクレアという名前はある程度浸透したのではないかと思います。

ラインナップを見てみると、ワンピースやスカートが4990円、トレンチコートが1万2900円などと、一流デザイナーの商品とは思えない価格帯で商品が展開されています。これらをハイブランドで購入すると正価で10万円はくだらないでしょう。

コラボ商品はブランド物としては安くても、通常ラインよりは1.2~2倍ほど高くなります。通常商品よりも色や柄、素材などが少し凝っていたり、露骨にコラボ先のブランドロゴが入っていたりするので、見分けは付きやすいでしょう。またユニクロ、ジーユーのコラボ商品は通常商品よりも良い素材が使われていることが多くあります。これは特に綿やウールの天然素材で顕著で、機能性ではなく、風合いや生地の厚みが格上になります。

なぜハイブランドと低価格ブランドのコラボは実現するのか

ユニクロが世界的な著名デザイナーとコラボをするのは今回が初めてではなく、過去にもジル・サンダー氏との「+J」、クリストフ・ルメール氏との「ユニクロU」(現在も継続中)、JWアンダーソン氏とのコラボライン(現在も継続中)などがあったので、そう珍しいと感じる人は少なくなっていて「恒例の風物詩」という印象すら抱いている人が多いのではないかと思います。またこれら以外にも、ユニクロはこれまでいくつものデザイナーズブランドとコラボしてきました。

ただ、デザイナーズブランドとのコラボは何もユニクロの専売特許ではありません。H&M、ジーユー、ZARAなどの各低価格ブランドもこれまで定期的にコラボを行ってきました(ZARAのコラボは後発で2020年前後からのスタート)。元来、高価格でステータス性を重要視するデザイナーズブランドと、マスに支持される大量生産の低価格ブランドとのコラボがなぜ継続し続けているのかについて今回は話を進めたいと思います。