ライドシェア解禁の是非は日本の行く末を左右する

評価を上げるために切磋琢磨することで生き残る、こうした自由資本主義的発想は、おそらく反発も招くでしょう。規制緩和でタクシー運転手がより厳しい競争にさらされれば、彼らの生活が苦しくなるのでは……と。それゆえこれまで規制に守られてきたわけですが、ただライドシェアの話はもはやタクシー業界だけにとどまりません。

現在1億2000万超の日本の人口は70年には8700万に減り、そのうち約4割は65歳以上だという推計があります。運送・運輸に限らずあらゆる産業・サービスの人手不足は深刻化し、シェアリングエコノミーが課題解決の一つの糸口になるはずです。働き方は今後劇的に変わっていくでしょう。一人がたった一つの職を持つのではなく、複数の副業を持つ時代に突入していくはずなのです。

少子高齢化時代における日本経済・産業の活性化という側面から、ライドシェアは進めるべきです。新サービス誕生の芽を摘むことは、今後のさらなる新サービスの展開、課題解決手法の出現を止めてしまう愚かな行為です。アメリカでタクシー配車サービス「ウーバー」が誕生したことで、「ウーバーイーツ」や「キャッシュレス決済システム」「日用品宅配サービス」などが派生し、飲食業界等に新風を吹き込みました。新しい芽が今後どう大きく化けるかは誰にもわかりません。

様々な社会課題を解決していく〈金の卵〉かもしれないアイデア・試行錯誤を、社会全体で育んでいく意欲と姿勢を日本も持ちたいものです。そのための一つのリトマス試験紙が、「ライドシェアの解禁」です。タクシー善悪論という狭い議論にとどまらずに、これからの日本社会をどうすべきかという大きな議論を展開していくことが、タクシー業界の強烈な抵抗を乗り越えるアプローチです。この程度の改革ができずに、どうして日本社会全体の改革ができるのか。ライドシェア解禁の是非は日本の行く末を左右するほどの重要なテーマなのです。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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