2021年度までに総額約55億円の過大支給
医療機関には、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金事業(病床確保事業)」として、都道府県を通じて国から補助金が支給されていた。これは、JCHOの病院に限ったことではないが、国や政府機関の決算、国の補助金などの会計検査を行う会計検査院の調査では、2021年度までに総額約55億円の過大支給があったことが判明した。
ベッドが空いていないのに、「空床」として受給していたケースが、9都道府県32医療機関で約24億円に上ったという。この補助金の支給額は1床(ベッド)当たりICU(集中治療室)で30万1000円/日、HCU(高度治療室)で21万1000円/日、その他は7万1000円/日と、重症患者を受け入れる病床かどうかで金額が異なっていた。本当は「その他」なのに、「HCU」と偽って受給したケースも3都府県4医療機関、約31億円もあったことも確認された。最も過大請求が多かったのは、神奈川県川崎市にある関東労災病院で、約22億円も多く補助金を受給していたというのだから悪質だ。同病院は過大請求分は既に返金しているという。
緊急事態宣言中でも病床は逼迫していなかった
関東労災病院は、厚生労働省が管轄する独立行政法人労働者健康安全機構が運営する病院の一つ。もともと財団法人が運営していたが、2004年に独法化された。業務上の事由、通勤時の負傷などいわゆる労災の治療だけではなく、地域の中核病院として一般診療やリハビリなども行う公的病院の一種だ。ただでさえ潤沢な補助金が投入されているのに、過大請求をするとは、許しがたい。
会計検査院は、全国の496病院の確保病床の平均病床使用率を調べ、「新型コロナウイルス感染症患者受入れのための病床確保事業等の実施状況等について」と題した報告書を2023年1月に公表している。この調査によると、2回目に緊急事態宣言が発令され、入院患者数が1万4417人と最も多く医療提供体制の逼迫が伝えられた2021年1月の確保病床に対する平均病床利用率は51.2%だった。3回目緊急事態宣言の期間中で入院患者数が2万4126人と最も多かった同年8月の確保病床に対する平均病床利用率は56.1%、その後で2022年3月までの間で最も入院患者数が2万9233人と多かった2022年2月の平均病床利用率は58.1%で、いずれも病床が逼迫していないことが分かる。