感染者が身近にいてもPCR検査を受けさせてもらえなかった

職場、学校などで1人でも身近で感染者が出れば大騒ぎになったが、このときにもPCR検査抑制策があだとなった。感染者が身近に出てもマスク着用の状態で接していた場合には、感染研の決めた濃厚接触者の定義に当てはまらないので保健所ではPCR検査を受けさせてもらえなかったからだ。

だが、この濃厚接触者の定義は非科学的だった。私が編集長を務める医療ガバナンス学会のメールマガジン「MRIC」に、首都圏の保健所で働く保健師がその実態を投稿してくれたので、その一部をここで紹介したい。

その保健師は、次のように指摘した。「(濃厚接触者の定義の)ポイントとなるのは、マスクをしているか、していないかである。その際、マスクの質は問わない。あくまで聞くのはマスクの有無のみである。調査において『マスクをして会っていましたか?』と尋ねた場合、『マスクをして会っていました』という返答だと陽性者と接触があった人であっても濃厚接触者にはならない。そして、マスクをしていた場所は感染場所にはならない。例えば、職場でマスクをしていた場合、職場の人たちは濃厚接触者には該当しないため、職場の人たちに対して追跡調査を行うことはないし、職場が感染場所になることはない」

オフィス
写真=iStock.com/mesh cube
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飲食店で多数のクラスターが出た本当の理由

飲食店で多数のクラスターが起きたとされたのは、単に、マスクを外していたと申告した人が多かったからで、本当はマスクを着けている飲食店以外の場所でも感染拡大は多数起こっていたはずだ。飲食店だけが悪モノになりスケープゴートにされたのも、今となってはナンセンスだ。

ちなみに、布マスクはほとんど意味がなく、不織布マスクでも正しく使わないとかえって感染を広げる恐れがある。感染症分科会長(当時)の尾身茂氏は、飲食するときだけマスクを外し、会話をするときにはマスクをする「マスク会食」を推奨したが、感染者が会食中にたびたびマスクに触れば、感染を拡散させるリスクが増す。マスクを外すときには本体には触らずにゴム部分を持ち、外したマスクは廃棄して手を洗ってから食事をし、その後マスクを着けるなら新しいものに取り換える必要があるが、「マスク会食」でそんなことをしていたら時間がかかって仕方がない。そんなことをした人はほとんどいなかったはずだ。