安すぎるが安全性は大丈夫か

LCC(ローコストキャリア)とは、既存エアライン(FSA、フルサービスエアライン)のおおよそ半分以下の運賃で搭乗できる航空会社のこと。1970年代のアメリカで運航をはじめたサウスウエスト航空を皮切りに、海外では古くから一般的な存在です。

そして、日本においても12年春から夏にかけて新たにLCC3社が国内便の運航をスタートさせたことで、「2012年は日本のLCC元年」だといわれています。関空を拠点に3月から運航開始したピーチ・アビエーションをはじめとして、本格的なLCCがついに日本の空に参入してきたのです。

LCCのビジネスは、「薄利多売」が基本的戦略になっています。唯一の収入源である運賃を大幅に下げて、なぜ儲けることができるのか? その理由は、LCCは徹底的にシンプルなビジネスモデルを構築しているからです。

航空ビジネスにおけるコストとは、「1席あたりの価値」に集約されます。席のコストには燃料費や乗務員の給与、各種機内サービスの費用から、本社スタッフの人件費、広告宣伝費に至るまですべてが含まれます。LCC経営のポイントは、これらのコストを可能な限り低く抑えつつ、飛行機1機あたりの発着回数を増やして、できるだけ多くの座席を提供すること。つまり「低コスト×高搭乗率=高利益」という公式が、LCCが勝つためのカラクリなのです。

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LCCと大手エアラインの1000kmあたりのコスト比較

これを実現するために、LCCは業務に関わるあらゆる要素をシンプルに組み立てています。まず、使用する飛行機は1種類のみとすることで、乗務員の訓練費や整備費などを最小化できます。飲み物や食事などの機内サービスは省略し、必要な人だけに有償で提供します。そして関空~福岡といった都市間の単純往復だけを1日に何度も繰り返す「短中距離×高回数」の運航をすることで、機材や人的資源をロスなく有効に使い切ることも特徴です。複雑な乗り継ぎではなく、丁度そのルートで安く行きたいと考えている消費者のニーズを狙い撃ちするわけです。