同じセントラル地区のショッピングモールでは、寿司チェーンが引き続き客足を集めている。ランチを食べていた30代女性は、現地の人々は報道を知ったうえで、大好きな日本料理をいまだに求めていると語る。

「もしも病気になったなどの事例があれば、人々は食べ物の放射線量にもっと注意を払うようになるかもしれません。でも今、そんなことは起こっていませんから」「だから私たちは何事もなかったかのように、これからも日本食を食べ続けると思います」

現地独立メディア「なぜ禁輸が必要?」

独立ニュースメディアの香港フリープレスは、処理水の放出から10日ほど経った9月4日に記事を公開。禁輸措置の発表後も「多くの香港人は平然としているように見え、禁止措置が必要だったのか疑問視する声すらある」と報じている。

もっとも、日本食レストランによっては、多少なりとも客足への影響があったという。あるレストランでは、放出前に駆け込み需要があったものの、その後は客数が2~3割ほど落ちこんだ。

一方、処理水の放出は気にしないという人もある。そもそも香港が面する南シナ海の水が、あまり安全ではないとする考え方だ。

秘書として働く30代女性は同紙に対し、「(香港・マカオ・広東省などを含む)グレーター・ベイエリアでも、おそらくは(地元の原発が)放出しているでしょう」と語る。日系スーパーでショッピングカートに寿司を山ほど積み込みながら取材に応じる彼女は、日本からの放出で安全性が変わるとは捉えていないようだ。

輸入禁止措置の対象となった日本の魚介類を扱うスーパーで、寿司や刺身を見ている客=2023年8月23日、香港
写真=EPA/時事通信フォト
輸入禁止措置の対象となった日本の魚介類を扱うスーパーで、寿司や刺身を見ている客=2023年8月23日、香港

10都県に限定した禁輸措置を、香港政府のポーズだと見る向きもある。香港のあるレストラン経営者は同紙に対し、禁輸措置は「奇妙だ」と述べ、合理性を欠くと指摘した。「禁止対象の10都県のすぐ隣の県からの輸入ならば影響がないと、なぜいえるのでしょう?」。

このオーナーは、香港政府が問題を「大げさに吹聴しています。国民に不安を与えているのです」と述べ、禁輸は過剰反応であるとの見解を示した。

香港政府の検査はすべて安全基準値を満たしていた

香港当局は輸入禁止から1週間後、日本からの輸入食品1288点をサンプリング検査した。うち半数以上が水産物や海藻、そして海塩だったが、これらを含めたすべてのサンプルが基準値に合格している。

現地の水産物への影響も現時点で見られない。香港の農業漁業保全署は現地の魚50匹をサンプリングし放射線検査を実施したが、すべて基準値の範囲内であった。