処理水は希釈されたうえで30年間にわたり分散して放出されるため、そもそも健康への影響は非常に小さいと考えられている。BBCは、福島からの処理水として海洋に放出される放射線の年間被曝量は、歯科のレントゲンやマンモグラフィーによる被曝量よりも低いと指摘する。

CNNは、17日間をかけて放出される初回放出分の処理水7800トンに含まれるトリチウムはわずか0.003グラムであり、重さにして人間の髪の毛10本分ほどだと例える。対して太平洋には、放出前の状態ですでに8400グラムのトリチウムが存在すると推算される。放出で新たに加わる量は、割合にしてごく微少ということになる。被曝量の観点では、飛行機に乗る方がよほど多くの放射線を浴びる、とも記事は指摘する。

米マサチューセッツ州・ウッズホール海洋研究所の海洋地球化学者であるケン・ビューセラー氏も同様に、福島産の魚介類の安全性については心配ないとの立場だ。米タイム誌に対し、「日本には、広範囲にわたる検査プログラムが存在します」「どの国よりも徹底的に魚を検査していることを私は知っています」と語る。

「日本食が好きだから食べる。ただそれだけのことです」

BBCは、健康への影響を心配する日本食レストランの利用客はやはり存在すると紹介している。その一方で、処理水の放出後も日本料理への熱意が変わる事はないと断言する客も少なくない。ある女性はBBCに対し、95%の確率で日本食への愛は変わることはないと自信を示した。「好きだから食べる。ただそれだけのことです」と女性は語る。

香港の主要英字紙であるサウスチャイナ・モーニングポストは、現地の高級寿司店の例を取り上げている。この店舗では品質を重視し、処理水の放出が決定したあとも意図的に日本産の食材を使い続けているという。

料理長のラップ・レオン氏は、「日本以外から仕入れた食材でオマカセ料理(高級な寿司ディナー)を作ることはないと思っています」と語っていた。「オマカセが好きなお客さんなら、気にしないでしょう」という。香港政府は8月24日、福島や宮城を含む10都県からの水産物の輸入を禁じたが、その他の日本の道府県からの輸入は引き続き可能だ。

食通でインスタグラマーのアレックス・ウォン氏は、サウスチャイナ・モーニングポスト紙に対し、処理水の影響は気にしていないと語る。「私にとっては、食体験の方がずっと重要なんです」

海外メディア「日本への敵意のあらわれだ」

処理水は、水処理システム(ALPS)によって放射性元素のうち、トリチウムと炭素14をのぞく62種類の放射性同位体を、国際的な安全基準以下まで除去した水だ。残るトリチウムと炭素14は海水で大幅に希釈することにより、放射線量が1Lあたり1500ベクレル未満となった状態で放出される。これは世界保健機関(WHO)が定める飲用水基準の約7分の1、国の安全基準の40分の1未満になる。(経産省