リクルートの人がこの問題を解決しようとしたら…

さて、実はこれは結構難しいテーマなのですが、思考実験として「もしわたしがよく知っている大企業だったらどう対処するだろうか?」と考えてみました。何社か頭に思い浮かべて考えてみたのですが、ひょっとするとそのうちの一社であるリクルートの人がこの問題を解決しようとしたら、ジャニーズ事務所の未来はいい意味で面白いことになるかもしれません。具体的に考えてみましょう。

ぐるりと高層ビル群に囲まれて
写真=iStock.com/scanrail
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1 制度よりも人として対処

再発防止にしても被害者への補償にしても、一般的には弁護士が活躍するジャンルの仕事です。弁護士の起用は王道なのですがふたつのよくない副作用があります。ひとつは賠償額を減らすことに注力しすぎること。依頼人の肩を持つのが弁護士の仕事なのでどうしてもそうなりますが、この行動は常に被害者の気持ちを損ねます。

もうひとつは形式合理性を重視しすぎること。調査チームからコンプライアンス体制を構築せよと求められていることで、社内にどんどん堅苦しい制度やルールができていきます。結果、人間としてそうしてやりたいけれども、社内のルールでそれができないなんてことが増えていきます。

もしリクルートだったらこの問題は「人の問題だ」と認識して、逆の取り組みに力を入れると思います。ルールを作る前に人が人として人の話を十分に聞いて、何に対して何を行うのかを徹底的に想定して、議論の俎上そじょうに載せていくでしょう。

というのもこの問題、被害者は本当に多様なのです。数十人、数百人という数の問題ではなく、それは一人ひとりの被害者であり、一人ひとりの気持ちや思いは違います。何をしてほしいのかの思いも多様でしょう。

なので絶対にやってはいけないことは、弁護士のアドバイスに従って一律の補償ルールを作ること。やったほうがいいことは、人として話を聞くところに経営陣や社員がなるたけ多くの時間を費やせるようにすることです。