2 対立ではなく対話に持ち込む努力をする

この一番目の話と隣接する話でもあるのですが、一般的には不祥事というものは対立構造を生みます。ジュリー氏と被害者であればそうなる必然性は高いのですが、対立が深まれば補償の論点は賠償金の金額だけの対立軸に収斂します。

さきほど被害者の思いはさまざまだと言いましたが、具体的には心からの謝罪をしてもらうことを通じて傷ついた心を癒やす機会を求めている人もいるでしょう。十代の頃に失ってしまった芸能人としてのデビューについて再挑戦の機会を求める人もいると思います。

リクルートの人は、大概の大きな対立は話をとことんすれば分かり合えると思っています。そして分かり合うために他の会社の人から見れば驚くべき努力をします。営業の風土が強い会社なので、相手から断られるのはあたりまえで、入り口で拒否のサインが強ければ強いほど燃える傾向があります。何年もかけて相手の懐に入り込み、いつのまにか拒否されてきた相手の懐刀のようなポジションを占めてしまうのがリクルート社員です。

ジャニーズ事務所も今は対立から始まっており、歴史的経緯からすればこじれにこじれている相手も多数存在するところがスタート地点なのですが、そこでどれだけ対話の努力ができるのか、もしリクルート社員ならジャニーズ事務所が想像できないほどのエネルギーをここに注ぎ込むだろうとわたしは思います。

深刻な雰囲気の対話
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3 出入り自由で壁をなくす

ジャニーズ事務所のこれまでの風評を先に挙げさせていただくと、事務所を出ていった人は敵だと認定するのがジャニーズ流だと思われています。事務所内の結束を強めるために、独立した人を敵視するのは、過去のビジネスモデルとしては必要だったのかもしれません。

おなじように組織の結束力が強いにもかかわらず、リクルートの社風では出戻りは歓迎されます。出戻りどころか、独立してベンチャー企業を立ち上げて競合するようなサービスを始めた元リク社員も仲間として認定されています。

もしリクルートがジャニーズ問題を解決しようとするとしたら、わたしはこの出戻り問題や独立問題について、メスを入れたら面白いのではないかと思います。というのは声を上げた被害者はすでに社外に出ているからです。

仮に金銭以外の救済策のひとつとして、事件を理由に退所した被害者を再雇用し、リスキリングしたうえで再デビューさせる施策を考えたとしましょう。この施策、本質的には一定数の被害者にとっての救済になりますし、もともと売れるポテンシャルのある人財ですからジャニーズ事務所にとっても再発掘はビジネスとして意味のある話になります。