ブッダが教えた、導く者の「心」

仏教は、2600年もの永きにわたって受け継がれてきたブッダの教えですが、その歴史は、師匠が弟子を育成する営みの歴史であったと言っても過言ではありません。

いかに弟子を育てるのか。いかに人々を導くのか。その問いがなければ、仏教はとうの昔に途絶えてしまったかもしれないのです。

会社であっても同じです。社員が育たなければ、会社の存続、繁栄はあり得ません。だからこそ、上司は上司として果たすべき役割を理解し、上司としての「心・技・体」を兼ね備えていなければなりません。

では上司の「心」とは、どのようなものでしょうか。

仏教では、師匠が弟子を、僧侶が人々を導くことを「教化(きょうか・きょうけ)」と呼びます。

教化とは、「教導化益」の略で「徳をもち、正しいところへ手を握って連れていく」という意味です。

上司の役割は、部下の育成です。部下が立派に活躍できるように、教え導き、その能力や魅力を引き出してゆくことが「教化」です。

慕われる上司・好かれる上司の共通点

『六方礼経』というお経の中に、上司から部下への教化の実例が示されています。

『六方礼経』とは、ブッダが資産家の息子シンガーラに対して説いたもので、6つの人間関係についての極意が書かれています。

6つの人間関係とは親子、師弟(先生と生徒)、夫婦、朋友、労使(雇い主と使用人)、宗教者と信者です。

このうち、師匠が弟子に対する時の心得と、雇い主が使用人に対して接する時の心得が、上司から部下への接し方を考える上で、非常に参考になるので紹介します。

慕われる師匠(上司)に共通する5つの特徴
①善く訓練し指導する
②善く習得したことを覚えさせる
③すべての学芸の知識を説明する
④友人、同輩に弟子の善きところを吹聴する
⑤諸方において、庇護(守って)してやる。


好かれる雇い主(上司)に共通する5つの特徴
①その能力に応じて仕事をあてがう
②食物と給料を給与する
③病気の時に看病する
④素晴らしい珍味の食物などを分け与える
⑤適当なときに休息させる