「どうやら空間認識能力は人一倍あるみたいね」

また、図面で円のケーキを3つに切る線を書かせようとすると、ベンツのロゴのようなY字を書くことができない。どうやっても、T字にしか円を区切ることができないのだ。

絵に関して興味深かったことがある。

ココさんが図工の授業で、札幌にある時計台の写真をプリントして写生をさせてみた。するとがっちゃんは、いきなり用紙の真ん中に丸い時計を描いた。それから時計を囲い込むように、建物全体を描いていったのだ。

一般的には、用紙の中に構図が収まるように建物全体から描いて、最後に時計を描き込むだろう。でもがっちゃんは逆の順番で描いていき、しかも建物がピッタリと用紙に収まっていた。

「この子、どうやら空間認識能力は人一倍あるみたいね」

ココさんは、がっちゃんが描いた時計台を見て感心したようにいった。

写真左から、ココさん、GAKUさん、父親の佐藤典雅さん
筆者提供
写真左から、ココさん、GAKUさん、父親の佐藤典雅さん

「がっちゃんを遠足に連れていっていいですか?」

がっちゃんのスーパー多動症ぶりはものすごく、がっちゃんに普通の授業を受けさせるのはほぼ不可能だった。それを見かねてココさんが提案してきた。

「のりさん、がっちゃんを遠足に連れていっていいですか? 机での勉強の代わりに、社会勉強としていろいろな体験をさせたほうがいいと思うので」

たしかに、そのほうがいいだろう。

がっちゃんの集中力が続くのは5分程度だったので、通常の授業ではもたない。運動の授業も試してみたけれど興味を示さず、指示された運動はいっさいしない。こういうときのがっちゃんは、まったく聞こえていないかのように指示をスルーする。

そして、毎日ノーベルを脱走しては、エジソンやコンビニで珍事件を発生させていた。ここは遠足にでも行ったほうが、お互い楽だろう。

「そうですね。遠足を増やして、好きなところへどこでも連れていってください」

とはいえ、これはこれで大変なタスクだ。がっちゃんはいつも走り回っていたからだ。