長年連れそってきた猫「ココちゃん」が亡くなった
ちょうどそんな頃、わが家では悲しい出来事があった。長年連れそってきた猫のココちゃんが、19才で息を引き取ったのだ。ココちゃんはハワイで拾った子猫で、ずっと一緒に過ごしてきたメンバーだ。
がっちゃんは動物が近くに来るのを嫌がる。だからココちゃんが近くに来ると“No!”といって毎回逃げ去る。でもココちゃんの存在自体はまんざらでもないらしく、“Cat”と呼んでいた。
わが家にはココちゃんの姿はなくなり、写真が飾ってあるだけだ。当然さっちゃん(※がっちゃんの母)とりりちゃん(※がっちゃんの妹)は大泣きだ。がっちゃんも、どことなく寂しそうだった。
しかし、ちょうどココちゃんがこの世を去ったその翌月に、入れ替わりでもう一人のココが現れた。英語表記も同じCOCO。それが、現在がっちゃん担当のココさんだ。彼女が面接に現れたときに、ボクはふとこう思ってしまった。
「もしかしたらココちゃんからのプレゼントで、ココさんがやってきたのかな」
真っ赤な髪とマニキュアのココさんが現れた
とはいっても、面接に現れたココさんの見た目は、童顔のココちゃんとは正反対だった。ココさんは、真っ赤な髪とマニキュアで面接にやってきた。強い黒のマスカラとアイシャドウ、そして全身黒のモード系の服装。
(あ、ティム・バートンがやってきた!)
これがココさんへの第一印象だ。ココさんの前の職業を聞くと、パリコレでも活躍していたファッションデザイナーだという。
「なんでそんな方が、うちに来たいんですか?」
「実は、私の身内にも発達障害の親族がいまして。人生最後の仕事は、発達障害に関われる仕事にしたいと考えていました」
ふむふむ、なるほど……。すると彼女から意外な質問をされた。「髪の色はこのままでも大丈夫ですか? あとこのマニキュアも」
「なんで、そんなこと聞くんですか?」
「実はアイムの前にいくつかの福祉施設で面接を受けたのですが、全部断られまして。このヘアカラーとマニキュアでは、利用者家族にとって失礼だから直してきてくれといわれて。でも、それじゃあ、私の存在が失礼みたいな言い方じゃないですか」
なるほど。福祉業界は、ヘアカラー禁止、マニキュア禁止、アクセサリー禁止、地味な服装といった保守的な世界だ。
「そうしたらうちのダンナがネットで調べてくれて、ここの社長さんだったら大丈夫なんじゃないかといわれて応募しました」
「大丈夫ですよ、うちは気にしないですよ」
というわけで、ココさんはパートタイマーとしてアイムに入ることになった。
ここから、がっちゃんの新しいチャプターが始まる。