企業組織でも同じです。上司に「こういうキャリアを進むといい」と言われると、自分のあいまいな目標よりも、上司の言うキャリアのほうが明確で安定したものに見えてしまいます。

私たちは社会からの要請や期待を受け生きています。社会の要請や期待は、生き方への欲望よりもはるかに具体的で、強い力を持っています。社会性に引っ張られてしまい、生き方を自分で選択しない/できない人が多いのです。

しかし、神戸大学と同志社大学の研究によれば、幸福感をもたらす要因の重要度では、「健康」「人間関係」に続いて、「自己決定」が強い影響を与えることが明らかになっています。さらに、「自己決定」は「所得」「学歴」より重要度が高いこともわかっています。

つまり、人に羨まれる学歴や素晴らしいキャリアを手に入れたとしても、それが自分で望んだ生き方でなければ、決して幸せにはなれないのです。

ですが、多くの人は自分の「人生の軸」を考えたこともありません。

そこで役に立つのが「やりたいことリスト100」です。その名前のとおり、やりたいことを100個書き出すというワークです。ロバート・ハリス氏の著書『人生の100のリスト』から始まったもので、やりたいことを100個書いて、順番に実現していくと面白い人生になると提唱されています。

このワークに取り組む方は多く、人生が変わったと言う人もいらっしゃいます。しかし、正しく役立てられている人が少ないというのも実情です。

というのも、とにかく100個書いて、やみくもにやりたいことをこなそうとする方が多いからです。このような使い方をすると、結局、人生の軸を見つけることはできません。

人生の軸を見つければ、どのように生きるかを自分で決められるようになります。漠然としたモヤモヤが晴れ、人生が楽しくなります。「やりたいことリスト100」の正しい使い方を見ていきましょう。

100個のやりたいことを簡単に書き出す方法

やりたいことを制限なしに100個書き出すのはかなり難しいです。そこで、書きやすくするためのジャンルリストを使います。私がおすすめしているのは以下の8つのジャンルです。「仕事」「お金」「人間関係(友人・パートナー・家族)」「学び・成長」「楽しみ」「健康」「ライフスタイル」「ライフワーク(趣味)」。この8つのジャンルに従って満遍なくやりたいことを書き出していきましょう。

8つのジャンル分けは、心理学で使われる人生の領域の分類です。ジャンルごとに満遍なくやりたいことを書いていくと、人生でのやりたいことをだいたい網羅することができます。

また、制限なしにやりたいことを書き連ねると、無意識のうちに「いま仕事で関心のあること」のような、現在気になっている願望が多くなってしまいがちです。満遍なく書いていくことで、そのような偏りを少なくできます。