内田氏が実践する本の読み方

まずは書籍である。本離れが進んでいるなどと言われているが、本は今も昔も、私にとって重要な情報源の一つだ。別にビジネス書だけではない。小説やノンフィクション、あるいはコミックスまで、あらゆる本を読む。そして、気になる箇所があればどんどん線を引いたり、書き込みをしたり、付箋を立てたりする。

電子書籍も使うが、急いでその本を手に入れなくてはならない場合や、やはり急ぎで情報をサッと頭に入れなくてはならない場合に限られる。紙の本のほうが書き込みなどがやりやすいからだ。電子書籍にもマーカー機能などがあり、それを活用するのもいいかもしれないが、私は使っていない。

書き込みや付箋の貼り方に、特にルールは決めていない。書き込みはそのとき持っている筆記具を使う。色もまちまちだ。付箋も色や貼り方にルールを設けているわけではない。筆記具も付箋もなければ、そのページに折り目をつけてしまう。

著者の意図は無視、感情移入も不要

この分野ではかつて、齋藤孝氏が提唱する「三色ボールペン」による色分けがブームになった。これは、「客観的に見て最も重要な箇所」に赤ボールペンで、「客観的に見てそれなりに重要なところ」に青ボールペンで、「主観的に、つまり自分自身が面白いと思った箇所」に緑ボールペンで線を引くというもので、なるほど優れたメソッドであると思う。

明治大学における、坂東玉三郎と齋藤孝教授の対談
明治大学における、坂東玉三郎と齋藤孝教授の対談(写真=UZM/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

だが、私はずっと単純な方法を取っている。それは、本に対して求めているものが違う、ということかもしれない。

本というものはおおむね、「著者の主張を知るためのもの」と考えられているはずだ。

もちろん、それは間違いではないし、そもそも私自身も本を書く身として、一つの主張を立ててそれを元に論を進めていく。つまり本とは、「著者の文脈」で組み立てられているものなのだ。

私も小説を読むときには、すっかり感情移入をしてその世界に入り込む。だが、それ以外の本に関しては、「著者の文脈」を完全に無視して、「自分にとって役に立つか」「面白いか」という視点で読んでしまうのだ。そして、アンテナに反応したところのみ、印をつけたり書き込みをしたりして、頭の中に入れていく。つまり、齋藤氏のメソッドのうち「緑のボールペン」の箇所のみをチェックしていることになるだろう。