「異常値」が見つかったらチャンス

そしてもう一つが、「異常値」あるいは「例外」を見つけようとするアプローチである。

異常値とは、「これはちょっと、普通の会社と違うな」「常識と違うな」とか、「ここはどうもよくわからないな」といったもののことを指す。具体的には、同業他社に比べてある部門の人数が極端に少ないとか、ある経費が飛び抜けて多いなどといったことである。

こうした「異常値」を発見したら、チャンスである。担当の人に「ここ、もうちょっと詳しく教えてください」と話を聞いたり、それに関する新たな資料を出してもらったりする。そうしてどんどん深掘りしていくことで、問題の本質にたどり着くことがあるのだ。

コンサルティング時代の事例を紹介したい。ある銀行のケースだが、本部の方針に全く従わないのに、なぜか行く先々で好業績を上げている支店長がいた。

銀行の看板
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

本部としては示しがつかないが、数字を上げているのでなかなか口出しができない。まさに「異常値」である。

そこで早速、その支店長のところに行って話を聞いてみると、面白いことがわかってきた。

当時の本部の方針は、コンピュータを駆使したエリアマーケティングだった。確かにその支店長はコンピュータを使っていなかったのだが、実は紙のノートを使って、それ以上に緻密なデータベースを元にしたマーケティングをやっていたのだ。

結局、その支店長には同じやり方を続けてもらう一方で、彼のやっていることを本部の方針に反映するよう提案。結果として、より効果の上がるエリアマーケティングが可能になった。

資料の読み方も自分の「ポジション」で決まる

「仮説」から入るアプローチが王道だとしたら、「異常値」から入るアプローチは、より差別化を意識したものと言える。

私はどちらのアプローチも好きであったが、どちらを選ぶべきかは、やはりアウトプットから考えるべきだろう。

自分が全体像を的確に把握することを求められるポジションにいるならば、やはりまずは「仮説」から入るアプローチを取るべきだろう。だが、チームの中でユニークな発見を求められる立場にいるとしたら、「異常値」から入るアプローチで、誰も気づかなかった視点を提示すべきかもしれない。

自分がどんな立場で、どのような切り口で資料を読めばいいかがわかれば、資料を読むスピードも、そこから必要な情報を得る精度も、自然と増してくる。「まずはインプットから」と漫然と資料を読むことこそ、時間のムダなのである。