なぜこんなにも日本はダメなのか

マイナンバーカードをめぐってトラブルが続出している。国民の不安や反発を増幅しているのは、現在の健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に移行すると政府が言い続けていることだ。

岸田文雄首相は8月4日に記者会見し、「マイナ保険証の不安を払拭する。デジタル敗戦を二度と繰り返してはならない」と強調したが、なぜ日本はこんなにデジタル化に弱いのか。根本から考えることも必要だ。

記者会見する岸田文雄首相=2023年8月4日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者会見する岸田文雄首相=2023年8月4日午後、首相官邸

今年春以降、マイナンバーカードに関わるトラブルが次々と明るみにでた。

「コンビニで他人の住民票が発行された」「マイナンバーカードと一体化された健康保険証に、他人の情報が登録されていた」「マイナンバーカード取得者向けサイト『マイナポータル』で他人の年金記録を閲覧できた」「公金受け取り口座に別人が登録された」など。

いずれも政府が「マイナンバーカードを使えばこんなに便利になる」と、大々的にアピールしてきた分野だけに、衝撃は大きい。

政府が急ごうとするほど国民は不安になる

マイナンバー制度が2015年に導入された当時は、「マイナンバーは個人情報であり、絶対に他人に知られてはいけない」などと言われ、保管用金庫の売れ行きが伸びるといった騒ぎもあった。なのに、他人の目に情報をさらすようなことが続出しているとは。なんともショッキングだ。

コンビニでの誤発行は、富士通の子会社が開発したシステムに問題があった。健康保険証は、健康保険組合などがマイナンバーを紐づける際に入力ミスをしたことが原因だった。公金受け取り口座の誤登録は、自治体の支援窓口での操作ミスによって引き起こされた。

政府は、こうしたトラブルは、マイナンバー制度の根幹にかかわるものではないと考えている。6月末に「マイナンバー情報総点検本部」を設置し、「マイナポータル」で閲覧できる年金や税など29項目の情報の点検・修正、情報漏洩の有無の調査などを秋までに行うと決めた。

点検本部発足時には、中間報告を8月末にまとめると発表したが、岸田首相の指示で8月8日の公表に前倒しした。

前倒しは、普通ならやる気を示すと受け止められるが、今回は、逆に人々の不安をかきたてた面がある。急がせることによって、新たなミスやトラブルを誘発したり、何か本質的な問題を見過ごしたりしないかという心配があるからだ。