デジタル敗戦する4つの根本原因

今回のマイナンバーカードのトラブルを含めて、日本のデジタル化への動きには、共通する構図がある。

1.まず政治家や官僚などが、海外動向を見て「日本も負けてはならじ」と走り出す。

2.しかし、政治家も官僚も十分な知識がないため、的確に注文をつけたり、指導力を発揮したりすることができない。

3.司令塔が不在のまま、自治体やメーカー任せになる。各省庁もばらばらに進めるので、官庁ごとのシステムが温存される。長年続く省庁間の縦割りの壁が、デジタルでも続く。

4.政治家などが思いつきで注文をつけ、開発などの現場をいっそう混乱させる。

こうして時間が過ぎる間に、デジタル化が遅れていく。

使い手への配慮不足もある。

多くの人々が使うということは、どんな使われ方をされるかわからないということだ。そのために製造業やIT業界では、「fool proof(フール・プルーフ)」が重視される。間違った使い方ができないように設計することで、日本では、「ポカよけ」とか「バカよけ」と言われたりする。

例えば、今回、自治体の支援窓口の端末を使って口座登録をした時に、ログアウトを忘れた人のマイナンバーに、次に使った人の口座が登録されてしまうトラブルが続出した。ログアウトしないと警報が鳴るなどの仕組みを設けていれば、防げたと思われる。他にもミスを誘発するものはないか、使い手側の視点で点検する必要がある。

エンジニアを下請けのように見なしてきた

省庁縦割りの弊害も強く残る。

日本の公的制度は、いろいろな官庁が担当している。システムもそれぞれの官庁にとって使い勝手が良いようになっている。

その問題を根本から解決することなく、いろいろな制度を紐づけようとしたことから問題が深刻化したとみられる。

例えば、マイナンバーやマイナンバーカードには、氏名の読み方・フリガナが登録されていない。戸籍に記載されていないためだ。これが間違いを誘発する土壌となった。法改正により来年から戸籍に読み方も記載されるが、旧字や異体字、住所表記などの課題は残る。

8日の中間報告では、政府が統一的なマニュアルを策定しないまま、現場に対応を丸投げしたため、紐づけ機関によって手続きがバラバラだったという実態も判明した。

ルールの作成や、入力したデータの見直し・点検作業に十分な時間をかけることも欠かせない。こうした問題の背景には、長年にわたって日本の組織では、コンピューターのシステムエンジニアなどを、下請けのように見なしてきた影響もあるだろう。組織の上層部の「自分はコンピューターのことはよくわからないが、エンジニアが意をくんで、ふさわしいものを作るだろう」という発想だ。「ど根性でやればできるはず」という考えも生み出した。

複数ディスプレイでプログラミングする人の手元
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
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