大量のゴミが残る理由は「割れ窓現象」

18時に交通規制による車道の封鎖が始まると、待機していた人々が一斉に道路に走り出してブルーシートで場所取りを始めます。車道は一瞬で観覧席に代わり、人で埋め尽くされました。

19時に花火が始まり、集まった人たちは90分の壮大なショーを堪能することができました。ただそれが終わると、道路にはブルーシートや空き缶、ビニール袋など大量のゴミの山が残されていました。

隅田川でも葛飾でも、花火の会場ではいわゆる割れ窓現象が起きて、そこら中にゴミが残された様子です。割れ窓現象とは、道端にゴミが捨てられているのを見ると、普段はそのようなことをしない人たちも「まあいいか」と思ってそこに自分のゴミを捨てていくような現象です。普段とは違う不届きなことを起こすのもオーバーツーリズム現象です。

熱中症を引き起こす2つのリスク

そしてもう1つ、今年の夏の災害級の暑さがもたらしたのが熱中症です。花火が開始する前から救急車で搬送される熱中症患者があちこちで出現しました。実は花火大会の現場には熱中症に関して2つのリスクとなる現象があります。1つは飲料が買えないという現象です。浅草では自販機は売り切れ状態のうえコンビニに人が入りきれず長蛇の列ができて、ペットボトル飲料を手に入れられない人が続出しました。

自動販売機
写真=iStock.com/flyingv43
※写真はイメージです

さらに人が密集することによる人熱ひといきれという現象が起きます。これは集まった人々の体温でその場所の空気が熱せられるうえに、風通しも悪くなることで、熱を帯びた空気が人混みに滞留する現象です。結果として気づかないうちに気分が悪くなり、夜間なのに熱中症になっていたという事態を引き起こします。

さて、この夏は全国各地で同じようなオーバーツーリズムの光景が繰り返されることになります。夏の夜にわたしたちを楽しませてくれるイベントとしての花火大会は、もろ刃の剣のように1つ間違えれば大きな社会問題を引き起こしかねません。