花火大会での大混雑やゴミ捨て問題を解決することはできるのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「花火大会で起きる問題は、全国の観光地を悩ませるオーバーツーリズムの問題と共通している」という――。
4年ぶりに開催された「隅田川花火大会」=2023年7月29日、東京都台東区
写真=時事通信フォト
4年ぶりに開催された「隅田川花火大会」=2023年7月29日、東京都台東区

花火大会の問題とは、オーバーツーリズムの問題である

7月25日、江戸川の河川敷で行われた4年ぶりの葛飾納涼花火大会には77万人もの観客が訪れました。夏の風物詩であり、しかもコロナ禍で長い間開催されてこなかったイベントでもあるため、その反動ともいえる賑わいを見せました。

7月29日の隅田川花火大会では、それをさらに上回る過去最多の103万人が殺到しました。ネット上では早い段階から混乱を予測して、花火の観覧は自宅でテレビを見ながらと呼びかける投稿がSNSに飛び交っていましたが、それでも大勢の人たちが現地を目指したわけです。

多くの人々を非日常で楽しませる花火大会にも、深刻な3つの問題が内在しています。災害級の暑さがもたらす熱中症のリスク、制御不能なほどの人波がもたらす群衆雪崩のリスク、そして後に残される大量のゴミ。これは真夏の夜に一晩だけ発生するオーバーツーリズムの大問題です。

隅田川花火大会で浅草に殺到する人々

浅草は国内外から多数の観光客が訪れるという意味でオーバーツーリズム対策が進んでいる街です。それでも隅田川の花火大会では、いつもとは違う異次元の人波が出現します。花火の開始2時間前の17時の時点ですでに人が動けないほどの混雑となり、警察の交通整理が効きにくい状況が起こり始めます。

この日の浅草近辺の道路は一方通行規制が行われるのですが、友達との待ち合わせなどの理由からか、規制を破る人が出始めます。最初のうちは柵を乗り越える人が散見される程度だったのが、やがてフェンスを破壊して人波が反対方向に独自に流れ出す事態まで起きました。

この事態で思い出されるのは昨年のハロウィンに韓国の梨泰院で起きた群衆雪崩によると見られる雑踏事故です。狭い路地に入った人々が身動きがとれなくなり、150人以上の犠牲者を出しました。これはオーバーツーリズムが引き起こした悲劇です。

警視庁はこの点に関しては十分な対策をたてていた様子で、実際に現場では人波を分断しながらコントロールすることで、1カ所に人が集中しないような規制をかけていました。フェンス破壊のような行為は幸いにしてそれ以上広がることはなく、徐々に人波は交通規制に従い始めます。