90%の人が、ひざ内側の軟骨がすり減っている

O脚になると、歩くときに足の外側で着地するようになり、つま先は上げにくくなる。何もないところでつまずいたり、こけるリスクも上がってしまいます。

この状態で活動を続けていると内側ひざ関節に偏って負担がかかります。平地を歩くとき5倍、階段を降りるとき8倍かかるというその力が、内側ひざ関節に集中するのですから、内側の軟骨はあっという間に減ってしまいます。

僕らが変形性膝関節症の患者さんの治療法を検討するとき、軟骨が少しでも残っていれば再生する可能性があるので、「軟骨がどれくらい、どこに残っているか」を調べます。すると、ほとんどの場合、内側が偏ってなくなっている(O脚変形)。関節軟骨が減るとは、均等になくなるわけではないのです。

【イラスト】軟骨のすり減り方
出典=『痛みが消えてずっと歩ける 100年ひざ』(サンマーク出版)

およそ90%の患者さんが、ひざの内側軟骨が減るO脚変形ですが、稀にひざの外側関節が減っているX脚変形の患者さんが来られます。

6歳から12歳までの女性は、内股で歩き、自然のX脚であることが多いのですが、成長とともにまっすぐになっていきます。大人になってもX脚である人は、足が長い人、ひざのお皿(膝蓋骨)が高い位置(普通の人よりも上のほうにある)の人に多いです。X脚変形になるメカニズムの詳細は未だ不明です。

股関節が変形すると脚の長さも変わる

一方のひざだけX脚変形になっている人では、その反対側の股関節が悪い人が多いです。

股関節が変形していくと、股関節が悪いほうの脚は、反対側に比べて短くなります。股関節は足の付け根で、そこが変形してくると付け根がからだの上に移動していくからです。そうすると、股関節が悪くないほうの長い脚を、もう一方に合わせようとして、X脚になることがわかっています。

そのようなケースでは、原因である股関節の治療を優先し、左右の脚の長さをそろえ、その間、ひざについては保存療法をして、股関節とひざ関節、両方を治すことが根本療法になります。

ひざ軟骨の内側と外側が均等に減ってしまうのが、先にも説明した、関節リウマチという病気です。これは自分のからだではない異物を攻撃する抗体が、自分の軟骨を攻撃したために起こります。その原因は、からだを異物から守っている免疫がおかしくなった、もしくは、軟骨が変性して異物になったから攻撃した――そんな仮説が考えられていますが、今のところ原因不明です。