※本稿は、巽一郎『100年ひざ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
気づかない間に「ニワトリ歩き」をしていませんか?
これまで僕は、1万4000人の変形性膝関節症の患者さんから「ひざの負担を大きくしてしまう生活習慣」があると教わってきました。そのひとつが、多くの患者さんに共通する独特な歩き方「ニワトリ歩き」です。
患者さんの歩き方を見て、その特徴から「ニワトリ歩き」と命名したのですが、大きな駅のコンコースに立って、通り過ぎる人を見ていたら、若い世代にも「ニワトリ歩き」の人がたくさんいて、愕然としました。
現代はこの歩き方をする人が大変多くなっているから変形性膝関節症になる人が増えているというのが正しいのかもしれない――そう気づいてから、「ニワトリ歩き」を招く姿勢の崩れが、変形性膝関節症の大きな原因だとわかったのでした。
頭が前に出ることが特徴的な姿勢の崩れ。そのまま歩くと、頭を前後に少し振ってバランスをとらなくては歩みを進められません。まさにニワトリのような歩き方でしょう? この歩き方はひざに負担を強いる、歩けなくなる「入り口」です。
食事や仕事、生活動作の多くは「前かがみ」姿勢で行われます。日本人ならではの、手で器を持ち上げて皿の上に頭が迎えにいく食事のスタイルをはじめ、パソコン操作、台所仕事、掃除機かけ、裁縫、農作業、庭仕事……。僕が自分の1日を振り返ってみても、手を体の前方に出し、前にかがんでいる時間がなんと多いことでしょう。
8㎏もある頭を無理な姿勢で支えている
本来ならばヒトは、骨に寄りかかるわけでもなく、無駄に筋肉を緊張させることもなく、備わっている構造のとおりの姿勢で立つのがラクです。水をいっぱい頭蓋骨の中にたたえ、その中に脳みそを浮かべた頭の重さは平均約6~8㎏。これがちゃんと西洋人のように肩の上にあれば、首と背、腰のS字カーブや骨盤などのおかげでバランスがとれ、無理なく頭を支えていられます。
ところが、重い頭が肩より前に出てしまったら、それを後ろから支える首の負担は2~3倍に増え、頭を後ろから支えている首の筋肉(僧帽筋)にのしかかります。背骨を支えているインナーマッスルである多裂筋にも余計な仕事をさせ続けることになるのです。そりゃあ、肩もこるわけです。
頭が前に出ることの弊害は、上半身のこりだけではありません。
前に行ってしまった頭とバランスを取るために、背中が後方へ出てきて、腰椎の前弯もなくなって猫背になります。
猫背になると、腰椎と骨盤が後ろに傾きます。その骨盤につられるように大腿骨が外側にねじれ、ひざの関節も外を向き、いわゆるガニ股になってしまうのです。するとひざは伸ばしにくくなり、軽く曲がって、O脚になります。