睡眠不足で脳の老化が進むメカニズム
【脳が老化する要因③】睡眠が不足している
睡眠不足ももちろん、老化を進める原因となります。睡眠が足りていないと、脳内ホルモンの分泌のバランスが崩れるだけでなく、睡眠中に脳内から排出されるアミロイドβと呼ばれる老廃物が排出できないまま蓄積してしまうからです。
脳内には、リンパ系に似た働きをする「グリンパティックシステム」という循環システムがあります。脳で重要な役割を果たす「グリア細胞」が睡眠中に少し縮み、その隙間を使ってアミロイドβのような老廃物を排出することが研究によってわかっています。
睡眠不足は、このグリンパティックシステムの働きを不十分にしてしまうのです。アミロイドβは、いわば神経細胞の周囲に溜まったゴミ。この物質の蓄積は、アルツハイマー型認知症の発症と密接なかかわりがあるとされています。
認知能力を下げるタバコはいますぐやめるべき
【脳が老化する要因④】喫煙・飲酒が習慣化している
喫煙も血流や大脳皮質に悪影響を与えます。まずタバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素によって血管が収縮し、血流が悪化します。
さらに一酸化炭素は血液の粘度を高めるため、動脈硬化の原因となります。加えて、喫煙は血流に悪い影響があるだけでなく、脳の認知機能を司る大脳皮質を薄くしてしまうこともわかっています。大脳皮質がダメージを受ければ、とうぜん認知能力も下がります。喫煙が習慣になっている人は、いますぐやめるべきです。認知能力が下がってしまうと、どうなるか――それはここでは説明しないでおきましょう。
また喫煙だけでなく、アルコールの飲みすぎも脳を萎縮させ、その機能を低下させる原因です。アルコールの大量飲酒と認知症の関連を示すような論文も多数発表されています。とくに高齢になると、加齢により脳はアルコールの影響を受けやすくなると言われています。
アルコールは、睡眠にも悪影響があります。
そもそも睡眠は、浅い睡眠レベルの「レム睡眠」と深い睡眠レベルの「ノンレム睡眠」に分けられます。私たちはノンレム睡眠の間に脳を休息させているのですが、適量以上にアルコールを飲んでしまうと眠りが浅くなり、脳の疲労回復に悪影響を及ぼします。読者のみなさんのなかにも、居酒屋をハシゴするなどしてお酒をたくさん飲んだ夜に、どうにも寝つきが悪く、何度も深夜に目が覚めてしまった経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん適量を守れば、アルコールはストレス解消の効果があり、メンタルのリフレッシュにも役立ちます。お酒の摂取量の目安は、アルコールにして20グラム、ビールなら500ミリリットル、ワインならグラス2杯、日本酒なら1合程度までとするべきでしょう。