海外に施設をつくるならタイがおすすめ

海外に施設をつくるなら、やはりタイがおすすめだ。仏教国なので、日本人と相性がいい。一方、フィリピンは治安が悪いので推奨しない。

私と仲間はタイに高齢者施設をつくる計画を進めていたが、最終的には国内に目を向けて、千葉の稲毛にアクティブシニア向けの施設をつくった。

参考にしたのは、アメリカ南部に広がるアクティブシニアタウンだ。アリゾナ州サンシティの老人ホームなどは、若い人がたくさん働いていて“老人”タウンという印象はない。

アメリカ人は北部で働いてお金を貯め、リタイア後は家を売って気候が温暖な南に移り住むというライフスタイルが多い。老人ホームはそうした層が楽しめるように、人口の池やゴルフ場などを併設し、砂漠の中のオアシスのような雰囲気を醸し出している。

現在では少し古くなったサンシティを上回る人気があるのは、フロリダ州オーランドやネバダ州ラスベガスのアクティブシニアタウンだ。つくりはサンシティと変わらないが、オーランドはディズニーワールドに近く、ラスベガスも娯楽が多い。どちらも、友人や家族が遊びに来てくれやすい環境だ。

アメリカのアクティブシニア向け施設は一戸建てで、ゲストルームもある。子どもや孫は宿泊代不要なので、施設を拠点にして観光もできる。子や孫が遊びに来てくれるので、入居者も寂しい思いをしない。

稲毛につくった施設は、東京ディズニーリゾートに近い。マンションタイプだがゲストルームも用意しており、24時間楽器演奏や運動ができる。食堂もバラエティに富んでいて好評だ。そうした好環境も手伝って、入居者は1000人に届いた。ビジネスとして成り立つところまで、ようやく到達した。

介護施設では、入居者に対する暴力行為がしばしば問題になっている。日本人が日本で介護をする、という発想を抜本的に見直す必要があるのではないか。高齢化先進国である日本人の介護は、世界中の人に協力してもらい、日本だけではなく世界のどこかで。そのような解決策をつくり上げていかなくてはならない。そして、政府や行政が日本の20年先を見据えた発想と計画を持つことが、我が国の諸問題を解決するための第一歩だと思うのだ。

(構成=村上 敬)
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