神奈川県は社会人リーグの開催を1カ月延期
今回の事案を受けて埼玉県サッカー協会は社会人リーグの開催を1カ月ずらした。が、当事者ではない一般社団法人神奈川県サッカー協会も同じように社会人1部リーグの8月開催分を9月に延期した。同協会の中村元彦FAコーチはこう話す。
「埼玉県の事案を聞いた1種社会人部会の責任者から、夏はできれば避けたほうが良いので、調整可能なところから改善する判断をしたと報告がありました。ちょうどコロナが収束に向かい、いろいろなことが通常運転になる時期なので、このこと(熱中症対策)も含めて育成年代の年間スケジュールの改革を考えなくてはと思っていました」
社会人リーグの延期を受けて、中学生年代(ジュニアユース)や女子のリーグ戦もガイドラインの基準値を超えたときは迷わず延期に、夏休み中リーグ戦がない小学生はカップ戦が多い時期ではあるものの、自主的に中止・延期に動く考えの人達は少なくないという。
夏季のスポーツ大会を根本的に見直すべき
神奈川の中村FAコーチ、埼玉県サッカー協会の面々ともに口を揃えたのが、子どもたちを熱中症から守るためには「小中高の活動年度を変更するしかない」という抜本的改革だった。活動期間を6月終わり、9月始まりにする。そうすれば欧州と同じように、7、8月の夏休みをシーズンオフにする、もしくは軽めなトレーニング期間に設定できる。ただ、これを実現するには大学に至るまですべての教育現場の入学移行が必要なため、容易くないという声が根強い。
永島教授によると、子どもは体が小さいので外気温からの影響を受けやすいという。体温(36~37度)より外気温が大きくなると、体重に対して体の面積の大きい子どもは熱中症になりやすい。またこの「体温越え」が危険だとよく言われるが「実は体温より低いところでも問題なのです。気温が34度ぐらい以上からは、発汗による、より強力な体温調節が必要になります」と注意を促す。
皮膚表面の温度より外気温が高くなると、皮膚血管拡張がおこっても熱を環境に逃すことができなくなる。逆に熱を体に取り込むことになり、大人も子どもも危険にさらされる。だから、気温が36~37度以上を記録すると「体温より高い」ことが注目されるわけだ。ただし、教授が言うように、体温越えでない環境でも湿度が高くなると大人も汗をかけなくなるので注意しなくてはいけない。
また、飲水しても吸収されるまで時間がかかり、発汗のタイミングはコントロールできない。さて、一体どうするのが一番いいのだろうか。
「どうするか?やらないのが一番ですよ。ただ、僕も、よく考えずにやらないという選択をするのは好きじゃない。お話ししたように認識を変えたうえで、可能な限りの工夫をすることです」
今こそ大人は知恵を絞るべきだ。