迅速に救命措置がとられたが病院で息を引き取った
様子からすると、水を頭からかけているところで意識を失ったようだったという。大会運営関係者らが駆けつけ、人工呼吸やAED(自動体外式除細動器)を用いた心肺蘇生を試みた。当日の参加者に消防士や警察官がいたため、素早い処置がとられたそうだ。
手配された救急車が15時に現場へ到着。蘇生等の措置を引き継いだ後、15時20分にはドクターヘリがグラウンドに着陸した。周囲の人たちが男性に気付いたおよそ40分後にはヘリが到着している点から、発見段階で重篤であると判断されたと考えられる。
ドクターヘリは男性を乗せ15時45分に離陸。運び込まれた救急病院で必死の救命措置がとられたものの、当日19時ごろに死亡が確認された。病理解剖で判明したかは確認できないが、死因は心筋梗塞と診断された。
熱中症研究の第一人者で、医師、医学博士でもある早稲田大学人間科学学術院体温・体液研究室の永島計教授は「(心筋梗塞かどうかは)血液のサンプルでもわかるが、時に似た値が熱中症によって上昇する可能性もあります。運動などによる強い脱水は心筋梗塞の発症リスクなので、暑熱下での運動は強く関係すると思います」と警鐘を鳴らす。
男性はサッカー経験者。詳細な経歴は不明だが、オーバー40のチームに登録したのは今年度から。練習試合1回と公式戦1試合に出場し、7月2日の試合が3試合目だった。
大会はガイドラインに従って開催されていた
前所属のチームでどのくらいの競技頻度があり、どれくらいブランクがあったのか、もしくはなかったのか。また、当日どのような体調だったかも今となってはわからない。
「熱中症予防に関しては、毎年通達を出してきた。特に小中学生といった子どものほうを気をつけていたが、大人も危険なのは同じこと。盲点でした」(県サッカー協会)。
わかっているのは、大会関係者は当日、JFAが定めたガイドライン通りに運営していたということだ。WBGTが28℃以上となる時刻が試合時間に含まれる場合に講じなければいけない「JFA熱中症対策<A>」(下図)をクリアしていた。
この日は午前中から他のチームも試合をしていて、WBGTの記録は朝からすべてとってあった。が、一日通して30を超えたことは記録上にはなかった。つまり、猛暑の中で無理に試合をやったわけではなかった。さらにいえば、仕事を持ちながらサッカーを愛好する成人の場合、時に集まる人数が11人ギリギリで交代するベンチメンバーがいない状況で試合をすることもある。ただ、この日男性のチームは監督兼選手1人を含め14人いた。男性はフル出場したが、無理してプレーした形跡はない。