総合的な知恵が社会に求められている

走行している車の数が増えているとは思えませんが、道路工事によって、東京都内や都市部にかぎらず、各地にひどい渋滞が起きています。景気が悪いから道路工事が増えているというのなら、渋滞の起こらない時間帯に工事をすべきでしょう。

工事が行われている期間は、周辺の信号機のタイミングも変更して、渋滞が極力起こらないようにすることもできるはずです。AI(人工知能)の技術も活用できるでしょう。

さらに道路工事いかんに関わらず、車が渋滞する場所はたいてい決まっているものです。渋滞する場所については、信号機のパターンを変えるなど、工夫の余地があるでしょう。常時、左折が可能な交差点がもっと増えてもいいはずです。

海外の道路を運転したことがある人はご存じでしょうが、進行方向の路端側(アメリカでは右、日本やイギリスでは左)に曲がるときは常時進行が可能です。日本でもないわけではないし、増やそうと思えばできるはずなのにしていません。

道路交通法に掲げる「交通の安全と円滑を図り」のうち、警察の眼中には「安全」しかないようです。警察官は、違反を見つけて取り締まる怖い人になっていて、円滑な交通を助けてくれる優しい人とは思われていないのが現状でしょう。

受動喫煙の原因をつくっている喫煙者に対し、これだけ厳しい対応をするのであれば、道路工事のときに渋滞が起こらない時間帯を指定するとか、信号機のパターンを工夫するなどして渋滞の回避を義務づけるとか、排ガスを減らすための柔軟で総合的な施策を打ち出すべきだと考えます。

つまり、タバコをこてんぱんに叩きのめして、扁平上皮がんの減少という一定の成果が出たいま、さらに肺がんを減らそうとするならば、受動喫煙を槍玉にあげるより、自動車の排ガスが減る方法を考えたほうが実効性が高いはずです。

個人の健康法であれ、行政や政治上の事案であれ、データに基づいて合理的かつ柔軟に判断することは、当たり前のようでいて苦手とする人は案外多いのです。

こうした思考ができるかどうかにも、「頭がいい人」と「頭が悪い人」の違いが表れます。

先進国で唯一、日本のがん死が増えていることの意味

こんな例もあります。

警察庁の統計によると、飲酒運転による事故件数は、2000年の2万6280件をピークに年々減少し、2022年は2167件と12分の1になりました。

飲酒運転による死亡事故は、2000年の1276件から2022年の120件へと10分の1以下になっています。この期間に危険運転致死傷罪の新設や、飲酒運転の厳罰化などが行われた成果でしょう。

ここまで飲酒運転による事故が減っているデータがあるのに、さらに減らそうという動きがあります。朝の呼気チェックをするよう、アルコール検知器の設置を義務づけようというものです。

これは業務用の自動車を対象としたもので、やがてすべてのドライバーに呼気チェックを義務づける方向にあると見るのが自然です。

国民の生活に口を出して規制したがるのが「官」、とくに警察官僚の習性なのです。結果的に、夜の飲酒をともなう会食がけしからんという日が訪れても不思議はありません。

コロナ禍のときも痛感したことですが、人とワイワイと楽しくお酒を楽しむことがそんなに悪いことなのでしょうか。

人びとのささやかな楽しみが、「官」によってことごとく奪われるとなると、失われるのがメンタルヘルスです。メンタルヘルスが奪われると、うつ病や自殺の増加につながります。精神神経免疫学の考え方からすると、免疫力が落ち、がんも増えかねません。

実際、警察はほぼ無意味な取り締まりで渋滞を起こし、肺の腺がんを増やしている可能性が高いのです。そもそも、日本では死因のトップが40年以上がんであり、先進国で唯一、がん死が増えているのです。