親とはどんな存在なのか。社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは「あとになってから親のことがわかる、ということもある。私は父の葬式に出て、初めて職業人としての彼を見直した」という――。

※本稿は、上野千鶴子・樋口恵子『最期はひとり 80歳からの人生のやめどき』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。

手をつないで歩く親子のシルエット
写真=iStock.com/kieferpix
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父も母も「はた迷惑」

【上野】先日、ある子育て雑誌のインタビューで、最後に極めつけの質問をされたんです。どんな質問かというと、「上野さんにとって、親とは?」。まったく予期していなかったので驚きました。それで、思わず口をついて出た自分の言葉にさらに驚いた。「はた迷惑です」って言ったの(笑)。その言葉がそのまま誌面に掲載されたものだから、読んだ人からどれだけ批判がくるかと予期したら、これまたびっくりするくらい反発が少なくて。逆に多かったのが共感の声。若い母親の読者から「子どもにとってはた迷惑にならないような人生を送ります」とかいう感想が寄せられたりして面くらいました。

【樋口】私にしても両親への愛情もあれば感謝の気持ちもあるけれど、確かに父も母も「はた迷惑」ですよ、私にとっても。

【上野】ですよね。強い親も弱い親も、それなりに。

樋口「娘からしたら私も悪目立ちする親」

【樋口】うちの娘もそう思っているに違いないわ。なぜなら上野さんほど有名ではないけれど、テレビに出たりして、それなりに顔が知られてるし、ちょっとかさばる、娘からしたら私も悪目立ちする親ですから(笑)。

【上野】どこへ行っても樋口さんのお嬢さんって言われますよね。

【樋口】でも、娘はそのわりには苦情も言わずによく育ってくれました。娘が思春期のときに、私がパートナーと事実上の再婚をしたのは、本当は娘にとって嫌なことだったと思う。それでもとりたててグレもせずに育ってくれて。感謝しています。

【上野】樋口恵子の娘という看板を背負うと、グレられないですよ。

【樋口】嫌なことがあったとしても眉一つ動かさず、友だちをしっかりとつくって、別に偉くもならなかったけれど、放射線診断医という専門分野で働いています。

【上野】ご立派です。健気だわ。