急激に「単身化」する世界情勢

人々を結婚に駆り立てる社会的、心理的な力は今も圧倒的ではあるが、現実は変わりつつあるし、その変化は速い。いまや多くの国で、未婚の人たちは人口統計上、最も急速に数を増やしているグループだ(※6)

アメリカの新生児の約4分の1は一生結婚しないと予測されている(※7)

中国の公式な統計によれば、単身世帯の割合は1990年には4.9%だったが、2010年には14.5%まで上昇している(※8)

複数のヨーロッパ主要都市で、単身世帯の割合はすでに50%を超えており、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ドイツなどの国ではシングル世帯は全世帯合計の約40%となっている(※9)

初婚年齢は上がっているし、離婚はますます普通のことになっている。人々の意識における「既婚者」という社会的地位も下落している(※10)

世界中で、今なお独身に対する偏見や、敵対的な考えがあるのは事実だが、それでも、シングルでいることはますます盛んになりつつある現象だ。

上腕二頭筋を示し、自信を持って見える魅力的な若い女性
写真=iStock.com/Yurii Yarema
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「結婚していないこと」がストレスになる理由

シングルでいることは世界的現象になっているにもかかわらず、その事実を認めない文化はいまだに根強い。その結果、プレッシャーを感じて、今も多くの独身の人たちが結婚に追い込まれる。

結婚しなければならないというプレッシャーそのものが、ときには、結婚しているかどうかという事実以上に人々を不幸にする。だが、その2つを区別することは難しいし、不可能でさえある。

このような状況は、未婚の人々のあいだで「認知的不協和(自身の本来の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態)」を引き起こしている。

インタビューでは、多くの独身の人たちが、「結婚はしたいと思っている」と言う。

しかし、その行動をみると、結婚したいと思っている人の行動とは到底考えられない。彼らは既存の文化的、社会的価値観からプレッシャーを受けて、「結婚できたらうれしい」と口にする。

一方で、日常のデートや恋愛に関してそうした人たちが下す決定から判断すると、結婚を望んでいないとしか思えない。

人々は自分のパートナーとなるべき人について、ほとんど不可能な水準までハードルを高くしている。まるで、独身でいるのをやめるためには、よほどの理由が必要だと言わんばかりだ。

時代は変わりつつあり、ちまたには古くなった結婚制度に対する不平不満の声があふれている。だが、社会は今でもそれに気づかないふりをしているようだ。

その点では、結婚している人たちも同じだ。もちろん、パートナーといつまでも幸せに暮らす人たちもいる。しかし、シングルの増加を羨み、婚姻関係から自由になりたいと望んでいる人たちもいる。