交換日記を掲載することに問題はないのだろうか

〈淋しくて悔しいけれど、でも私は、あなたのおかげで愛を諦めない覚悟を知りました。もしかしたら、こんな風に本気でぶつかり合って求め合って、ひとを好きになったのは初めてなのかもしれません〉

2人が密に交わしていた交換日記には、まるで彼らの寝屋を覗いているようなきわどい表現のものもあるが、文春はご丁寧にその日記の一部を写真に撮って掲載している。

広末の夫のキャンドル・ジュン氏は自身が開いた会見で、日記の存在は知っていたが、文春に渡したのは私ではないと否定している。だが、その前の福島県二本松市の龍泉寺で行われた東日本大震災の月命日のイベントでは、「プライベートなことで世間をお騒がせしてしまって、申し訳ございません」「自分自身の家族はいま大変なことになってます。しっかりとこの後、けじめをつけますので、皆さんお楽しみに」という思わせぶりなコメントを発表している。

鳥羽氏の妻である可能性は低いと思うので、日記を文春に渡したのは夫のジュン氏である可能性が高いと、私は思う(その後、文春の7月6日号で、鳥羽氏がインタビューに答える中で、「ノート(交換日記=筆者注)を僕の家に持って帰ることはない」といい切っている)。

ところで、広末と鳥羽のあけすけなやりとりを書いた日記風のものを、誌面で報じることに問題はないのだろうか。広末は文春の直撃に対して、「私、プライバシーないんですか……」と訴えている。

元週刊誌編集長の私がいえた義理ではないが…

たしかに彼女は有名な女優だから不倫を報じられることは致し方ない。だが、不倫相手との肉筆のやりとりは、第三者には知られたくないプライバシー情報が詰まった「私信」である。

同じようなことをやってきた私がいえた義理ではないが、プライバシー侵害といわれても致し方ないのではないか。

私が、いま現場の編集長だとしたら、ここまで載せることには抵抗感があっただろうと思う。

生前の三島由紀夫からの私信を本に掲載しようとした作家が、三島の遺族から出版差し止めを求める訴訟を起こされた裁判の判例を持ち出すまでもなく、私信の公開には慎重であるべきこというまでもない。

たしかに文春は、2012年6月21日号で「小沢一郎 妻からの『離縁状』」というスクープを掲載した。亡くなったノンフィクション・ライターの松田賢弥が苦労して、小沢の妻が有力後援者に送った私信を手に入れたのだ。

文春は手紙の全文を誌面に載せた。私は、当時の編集長、新谷学氏は決断力のある人だと感心したものだった。

だが、これは小沢という有力政治家の妻の手紙で、地元の有権者たちを含め国民には「知る権利」があった。