自律神経が「ととのったー」と感じるメカニズム

では、サウナに入ると私たちの自律神経はどのようになるのでしょうか?

まず、高温のサウナに入ると、ジワジワと全身が温められるため、副交感神経の働きが優位になって血管が拡張され、血液は体の中心部から皮膚に近い血管に多く集まります。

血液の流れは、体温調整の役割も果たしているため、皮膚に近い血管に血液を集めることや発汗によって上昇する体温を外に放出して、冷まそうとするのです。

しかし、やがてサウナの熱さによって、逆に交感神経が優位になります。

この状態でサウナを出て、すぐに冷たい水風呂に入ったり、水シャワーを浴びると、さらに交感神経が強く働いて血管を収縮させます。血液は皮膚に近い血管から、体の中心部の血管へと移動して、今度は体温が低下し過ぎないように保温しようとするわけです。

その後、外気浴や室温で休むと、体は徐々に通常モードへと戻ります。

サウナの高温環境から、急に水風呂や水シャワーの低温環境に体をさらすことによって、自律神経は振れ幅が大きく働いて刺激を受けることになります。

このとき、体が温められて拡張していた血管は一気に収縮しますが、外気浴や室温での休憩で再び緩やかに拡張するので、血液がサーッとスムーズに流れ出します。人間は、血管が拡張して血流が促進されるときに「気持ちいい」という感覚を覚えるのです。

サウナによって、半ば強制的に自律神経の振れ幅を大きく働かせ、そのあとに休ませることで血液の流れはよくなり、自律神経のバランスが整いやすくなります。

これによって私たちは「ととのったー」と感じるわけです。

現代社会で自律神経のバランスを崩すのは当たり前

何かとストレスを受けることが多い現代社会では、自律神経のバランスを崩すことなく1日を過ごすのは、はっきりいって至難の業です。

また、夜更かしによる睡眠不足、ブルーライトを放射するスマートフォンへの依存など、自律神経のバランスを崩す原因は、枚挙にいとまがありません。

私たち現代人は、むしろ自律神経のバランスを崩さずに暮らすことはできない……と考えておいたほうがよいかもしれません。

いまの時代に大切なことは、自律神経のバランスは崩れるものだと自覚して、そのたびにきちんと正常に戻す努力をすることといえるでしょう。

いわば「生命維持装置」として働く自律神経ですので、そのバランスを崩したまま放置するとさまざまな不調を引き起こし、思わぬ大病に結びついてしまうこともあります。

自律神経のバランスの崩れは、万病の元なのです。

体のどこにも特段の病変は認められないのに、疲労感が消えない、頭が重い、イライラ感がある、食欲がない、頭痛、全身の筋肉、背中やおなかなどが痛い……など、なんとなく調子が悪いとき、医師から「不定愁訴(ふていしゅうそ)」という診断を受けることがあります。

私の研究では、不定愁訴を訴える患者の多くは、自律神経のバランスが崩れていると考えて、まず間違いありません。