人の良い方ほど“困っている人の助けになれば”という思いから、名前を貸してあげます。しかしこれは罠で、後に弁護士などを騙り、電話をかけて「あなたの行為は、名義貸しという犯罪行為だ。警察の捜査をうけることになる」と脅してお金を騙し取るのです。
ここでは、高齢者に「人助けになる」と自ら思いつかせて、申し込ませるように仕向けています。人は「これをしなさい」と一方的に押し付けられた意見には従いたくないものですが「こうしたらいいかもしれない」と自分で思いついた意見は大切にします。そうなるように、詐欺グループは誘導しているのです。
商品やサービスを売るために必死になって相手を説き伏せようとすれば、逆に相手の心は離れていくばかりです。大事なことは「あなたにしかできない」という重要感のアンカーを打ち付けて、話を進めることです。それにより、相手は「こうしたらいいかもしれない」と自ら思いつくようになり、交渉ごとはスムーズに進むでしょう。
「あなただけ感」を自発的に考えてもらう
2022年に問題になった旧統一教会の信者らによる霊感商法でもこの手法が使われています。組織的な指示で信者らは、教団名(正体)を隠してターゲットに近づきます。そして、先祖霊や悪霊の恐怖心を植え付けたところで、家系図を取りながら、次のような話をします。
「あなたの先祖はお金に関する数々の罪を犯して、霊界で苦しんでいます。それで今のあなたが不幸に見舞われているのです」
「どうすればよいのか」と相手が思っているところに、壺や印鑑を見せながら「これには悪霊を払い、先祖の霊を清める力があります」と言います。さらに「あなたは先祖を救う使命がありますね。これは気づいたあなたにしかできないことです」と畳みかけます。「先祖を救えるのはあなただけ」という重要感を植え付けながら誘導することで「そうか。この壺や印鑑を買うことで、自分が先祖を救える。そして自分の今の不幸を取り払える」と思い、「いくらでしょうか?」と値段を聞かせるように仕向けます。
こうして「買わせられた」ではなく「自分から進んで値段を聞いて買った」と思わせることに成功するのです。
人は「よい評価を受けたい」「重要な人物であると思われたい」という気持ちを持っています。ゆえに「あなたにしかできないこと」と思わせることが大事なのです。「〇〇を購入するのは今」と、一方的な話で契約させたとしても、相手は「させられた」という思いから、後からキャンセルするかもしれません。契約後に解約の申し出が多い営業マンは「あなただからできること」という重要感を植え付けていない、押し付けた話になっていないかを振り返る必要があるでしょう。
1. 事前の情報収集に徹する
2.「聞く7割」「話す3割」。本題に入ったら比率を逆転させる
3.「大事な点は3つあります」の言葉で要点を絞る
4. 一方的に押し付けられた意見ではなく、自分で思いついた意見であると錯覚させる
5.「あなただからできること」という重要感を植え付ける