また国家についても同様で、国家は他の国家からの圧迫に対して自己を守り得る限りにおいて自己の権利の下にあり、他国の力を恐れ、他国の援助なしに自国を維持できないのであれば、それは他国の権利の下にある。

アメリカの軍事力に守られる日本

アメリカの権力(そして軍事力)の下に置かれた日本は、スピノザに従えば、アメリカの権利(権限)の下にある。一方で、欧米諸国からの経済制裁を受けながら自己の考えに従って行動しているように見えるロシアは、自己の権利の下にある。

岸田総理は、迎賓館赤坂離宮でアメリカ合衆国のジョセフ・バイデン大統領と首脳会談等を行いました。両首脳は、会談を行い、続いて日米宇宙協力関連展示を視察しました。その後、共同記者会見を行い、続いて拉致被害者御家族と面会しました。次に、都内でIPEF(インド太平洋経済枠組み)関連行事に出席し、夜には、非公式夕食会を行いました。(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)
岸田総理は、迎賓館赤坂離宮でアメリカ合衆国のジョセフ・バイデン大統領と首脳会談等を行いました。関連行事に出席し、夜には、非公式夕食会を行いました。(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

このように、自国の権利の下にあることを“自立した主権国家”だと言えるとすれば、他国の権利の下にあることは“衛星国家”だと言える。

「主権国家」とそれを取り巻くいくつかの「衛星国家」によって構成される権力的秩序は、一種の疑似的な社会契約によって成り立っている。社会契約とは、本来は個人と国家との関係を理解するための議論である。各人が有する自然権を唯一の主権者(国家)に委任することで、その代わりに主権者である国家は国民を保護する義務を負うというものである。

これを国家間の関係に応用するとどうなるだろうか。主権国家と衛星国の間の社会契約は、本来は衛星国も有しているとみなされる主権(特に敵を特定する権利)を、秩序構成的パワーである真の主権国家(通常は地域大国)に委ねる(通常は秩序構成的パワーである大国と同盟関係を結ぶ)という形をとる。

つまり国家間の社会契約とは、主として軍事的な同盟条約なのである。

プーチンが重視する「大国政治」という視点

本質的にアナーキーな国際政治の世界では、法的秩序よりも権力的秩序の方が根源的である。先に、全般的な相互不信に基づく同盟体制と相互の信頼に基づく信頼体制という二つの国際秩序のタイプについて考察したが、三つ目のタイプとして、いくつかの大国が国際政治を主導するというタイプの国際秩序がある。このタイプの国際秩序は「大国政治」といわれる。