日本はもちろん、アメリカを中心的パワーとした秩序に取り込まれている。それゆえに、ロシアから見れば日本は自らの秩序には属さない異質の国家であり、可能であればいずれロシアの衛星国にしたいと考えている。

ここで注意してもらいたいのは、ロシアは日本と対等な友好関係を結びたいと考えているのではないということだ。日本は、真の主権国家ではない以上、ロシアと対等ではあり得ない。これがロシアの見る現在の(戦後の)日本の姿である。

プーチン大統領は、2020年に発表した論文「第二次世界大戦75周年の本当の教訓」により、世界に対して自らの構想する世界秩序についての考えを示している。

それによれば、国連安保理常任理事国である五大国が互いの立場を調整するメカニズムが国連であり、こうした国連を中心とする国際秩序を維持することこそが戦勝国の責務だというのである。

日本はもちろん国連安保理常任理事国ではない。ロシアからすれば、日本には五大国による国際統治に対等な主権国家として参画する資格はないのだ。

ロシアは「ソ連帝国の復活」を目指しているのか

では、ロシアは自らが中心的パワーとなる「帝国」となることを志向しているのか。

プーチン大統領は、ソ連の崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と呼んだことがあり、それをもって、ロシアはソ連帝国の復活を目指しているのだと言われることがある。ウクライナ侵攻も帝国の復活を求めるロシアの野望の現れだ、と言われた。

しかし、権力的秩序がすべて帝国的秩序となるとは限らない。権力的秩序はすでに述べたように、主権国家としての大国とその衛星国との間の社会契約的な関係からなる秩序である。

つまり、大国と衛星国の間にはれっきとした国境線が引かれており、その秩序は軍事・外交面での依存関係を基礎としている。つまり、国内法への干渉は不可欠の要素ではない。

ただし、政治思想が一致していなければ権力的秩序自体が機能しないため、実際には国内の政治体制も類似することが求められることがある。

冷戦時代における東側陣営は基本的に社会主義体制であることが、時に強制的に求められた。現代世界における欧米の権力的秩序においては、自由民主主義が共通の政治思想、基本的な価値として求められる。

アフガニスタンやイラクのような国でも戦後は自由民主主義の政治体制が立てられた。ただし自由・民主主義体制は、アフガニスタンでは失敗し、2021年にはタリバンが復活し、イラクでも成功しているとは言いがたい状況である。