タレントは性加害の事実を知っていたのか
ジャニーズ事務所の社長を筆頭に、経営陣に最も罪と責任があることは疑いようがない一方で、上記の点から「タレントに罪とか問題があるわけではない」というテレビ東京の石川一郎社長の主張に、賛同することはできない。
もちろん、すべての所属タレントに責任があるわけではない。特に、十分な判断能力がない未成年のタレントの責任は問えないだろう。これまでの個々人の言動や立場によって責任の重さが異なってくるのは当然であり、十把ひとからげに「責任はある、ない」と断定するのは無理がある。
喜多川氏による性加害の全容を解明する上で障害となるのは、当人が既に鬼籍に入っている点や、被害に遭ったと思われる人たちに調査をすることで過去の傷を抉る結果になる点である。一方で、誰が被害に遭ったかを特定する調査は行わなくとも、喜多川氏による性加害の事実をタレントや事務所関係者ら個々人が知っていたかを調査することは可能である。
犯罪行為に加担した人たちや喜多川氏の人格を称賛した売れっ子のタレントらは、新たな被害者を生み出す片棒を担いでおり、喜多川氏による性加害の事実を知っていたならば、責任を免れることはできない。
権力者の責任が問われない社会であってはならない
ジャニーズ事務所所属の櫻井翔氏は、6月5日、自身がキャスターとして出演する報道番組「news zero」(日本テレビ系)で「ジャニーズ事務所はどのようなことが起こっていたのかを調査してほしい。あらゆる性加害は絶対に許してはならない」と述べた。全面的に賛同する。この50年間、ジャニーズ事務所の関係者がどれだけ性加害を許してはいけないと考え、行動してきたかを検証してもらいたいと思う。
権力のある者たちの責任が問われず、立場の弱い者たちはマスコミによって徹底的にたたかれ、責任を追求される。このようなアンフェアな責任の追求ではなく、可能な限りフェアな責任を追求する社会を目指すべきであると考える。