日本式「早期教育」のニーズがある

キンダーキッズの売りは日本式の幼児教育です。例えば日本では、幼稚園で文字を教えるのは当たり前です。ところがカナダやアメリカではこれが「当たり前」ではありません。就学前は遊びながらコミュニケーション能力を身に付けるべきで、読み書きはその後、という考え方が根強い。でも少々「早期教育」をしたところで人格形成に悪影響が出るわけではないことくらい、現地の親御さんも分かっています。おまけに勉強だけでなく、運動や音楽やアートのアクティビティも充実していて楽しそうだから入園させたい、というわけです。

キンダーキッズは地元のオンタリオ州から保育園としてのライセンスを得て運営されており、認可園として助成金の対象にもなっています。まさに「現地校」なのです。

オンタリオ州にあるキンダーキッズ。教育研修で日本から派遣されているキンダーキッズの先生と。
写真=筆者撮影
オンタリオ州にあるキンダーキッズ。教育研修で日本から派遣されているキンダーキッズの先生と。

英国に見る輸出産業としての「教育」の可能性

さて前回、英国の名門私立校の海外進出をめぐる事情に少し触れました。もともと、ハリー・ポッターのホグワーツ校のような寄宿学校形式の私立の伝統校はビジネスとしてはあまり儲かりません。あれだけ広大な敷地に、生徒は数百人しかいないわけですから。

他方で、歴史と伝統に裏打ちされたイギリスの名門校の教育というコンテンツは、英語というメジャー言語を使っていることもあって売り物になります。そこで中国やインドのような経済発展著しい巨大市場を主なターゲットとしてこのコンテンツを輸出すれば、英国の学校にはフランチャイズ料が入ります。学校ビジネスは息が長いものです。分校を作って3年で終わりなんてことはありませんから、例えば分校を10校作ってそれぞれが100年続けば、経営基盤の安定に大いに寄与するのです。

英国のうまいところは、フランチャイズに際して権利も人もカリキュラムも出すけれど、土地建物については現地のパートナーに丸投げというところ。つまり英国側は金を出さないのです。リスクは取らないで儲けるという、実に巧みな輸出モデルです。一方、中国のパートナーは英国の学校のブランドを使わせてもらい、国内はもちろん日本をはじめとする他の国でも学校ビジネスを展開して金儲けをしているわけで、両者はまさにウィンウィンの関係です。

前回紹介したとおり、実は「教育輸出」は英国の国策でもあります。英国政府は欧州連合(EU)からの離脱を目前にした2019年に、英国の教育輸出額を2030年までに年350億ポンド(2016年の1.5倍)にするという目標を掲げた政策文書を発表しました(※2)

ここで言う教育輸出額には、イギリスの学校の海外展開による収益はもちろん、イギリス国内で留学生が落とすお金(授業料や生活費)も含まれます。つまり海外のイギリス系の学校からの収入だけでなく、そこで育った優秀な人材がオックスフォードやケンブリッジといったイギリスの名門大学で学ぶところまで「教育輸出」の恩恵はおよぶのです。これはイギリス経済を潤すだけでなく、名門大学の高いレベルを維持するのにも、将来的には高度人材の獲得にもつながります。

※2 2019年 英国政府「国際教育戦略(International Education Strategy)